今回、我々は谷川岳一ノ倉沢の岩場の登竜門と言われる烏帽子沢奥壁南稜に向かいました。憧れの一ノ倉沢を満喫することを楽しみにしていましたが、天候不良のため、途中で引き返しました。
8月27日、土合駅上空は日中は晴れ、夜一時雨。水上駅に集合し、マイカーで土合駅へ向かう。平日の為か、土合駅は閑散としている。
8月28日、土合駅上空は晴れ。深夜、マイカーで土合駅を出発し、谷川岳ロープウェーの乗り場である谷川岳ベースプラザ駐車場へ向かう。駐車場は1階のみ24時間営業している為、マイカーを1階に駐車する。装備を整え、一ノ倉沢出合に向かう。途中、登山指導センターに寄り、群馬県指定様式の登山計画書に、山塾様式の登山計画書を添付して提出する。出発の数時間前まで降雨があった為か、気温が低く、時々吹く風が涼しい。一ノ倉沢出合に着き、ハーネスとヘルメットを装着する。月明かりを頼りに国境稜線へ目を向けると、一ノ倉沢の岩壁の上空には雲が掛かっていて、天候は良くない。ここから、一ノ倉沢を遡行する。まず、左岸側から川原を遡行し、右岸のブッシュ帯への踏み跡が現れたところで、右岸へ渡渉する。ブッシュ帯を進み、一ノ沢出合の手前で沢に降りて左岸へ渡渉する。
2段5mナメ?(※下山時撮影)
再度右岸へ渡渉して、すぐに左岸へ戻り、2段5mナメ(?)の手前で右岸へ渡渉する。この滝は右岸にリッジがあり、これを高巻くことになるが、右岸の枝沢にあるスノーブリッジが邪魔で、リッジの裏に回り込むことが出来ない。仕方なくクライミングシューズを履き、リッジを直登すると、樹林帯の急な踏み跡が続き、懸垂下降地点へと至る。懸垂下降の支点は多量に打ち込んであり、ロープがフィックスしてあるので、気付かずに通り過ぎることは無いだろう。
衝立沢(衝立スラブ)出合(ひょんぐりの滝上部懸垂下降点から)(※下山時撮影)
ここで一ノ倉沢を見下ろして様子を見るが、雪渓が行く手を阻んでいて、ひょんぐりの滝の上部の衝立沢(衝立スラブ)出合へ降りる場所が見当たらない。時々、雪渓が崩れる鈍い音が聞こえる。休憩しながら、テールリッジに取付く方法と、進退について検討する。とりあえず、日の出を待ってから懸垂下降して、雪渓の状態を観察して、突破口を探ることにする。
一ノ倉沢への下降点
ここで大幅に時間を消費するが、衝立沢出合付近の右岸に一ノ倉沢に降りることができる隙間を見つける。ここには短いロープがフィックスしてあるが、持参したロープで懸垂下降する。ここから衝立沢を詰めて、テールリッジの樹林帯を左に見る辺りから、テールリッジに上がる。このテールリッジへの登りはとても悪い。ルートファインディングが不十分なのかもしれない。テールリッジの樹林帯を抜けると、小雨となる。テールリッジ上部の岩場は、フィックスロープを頼りに登る。
烏帽子沢奥壁南稜取り付き点
テールリッジを中央稜取り付きまで登り、烏帽子沢奥壁基部の横断バンドを辿って、南稜テラスへ到着する。雨で濡れた体に、風が吹き付けて、体温を奪われる。雨具を装着し、ツェルトを張って、午前9時を限りとして、雨が止むのを待つ。時々、日の光が差すが、雨は一向に止む気配は無い。時限となり撤退を決める。時間に余裕があるため、安全第一で懸垂下降で降りていく。
テールリッジ(上部岩場終了点から)
テールリッジ下部の樹林帯から先は、懸垂下降の支点が見当たらず、支点を探しながら下降していく。リッジ上を外さずに下降していくと、支点を見付けることが出来る。
衝立沢(衝立スラブ)(スノーブリッジ下から)
衝立沢左岸から一ノ倉沢まで懸垂下降していく。
一ノ倉沢の岩壁(ひょんぐりの滝上部懸垂下降点から)
一ノ倉沢右岸の懸垂下降地点までの登り返しは、フィックスロープを頼りに一人ずつ登る。樹林帯を下り、2段5mナメ(?)の右岸で最後の懸垂下降をする。一ノ沢出合で装備を解いて一ノ倉沢出合へ。一ノ倉沢出合では、乗り合いタクシーが待機していて、これに乗って谷川岳ベースプラザへ。無事下山となった。
【木村所感】
ネットの情報によれば「ひょんぐる」とは、水が跳ね上がるように、勢いよくとびだす様をいう丹沢地方での表現とのことですが、写真の滝は、ひょんぐりの滝ではないそうで、どこにひょんぐりの滝があるのか、雪渓が無くなった時に来て確かめてみたいと思います。
【二見所感】
北岳バットレス以来の久々の本格的な本チャンだったけど岩の濡れは実力から、最後の垂壁が判断を下降へと向かわせた。残念だけど安全を優先、リベンジに期待したい。南陵テラスまでの往復は谷川の支稜の雰囲気を十分味合わせてくれた。
【山行ルート】
谷川岳ベースプラザ(2:00)~一ノ倉沢出合(3:00)~懸垂下降地点(4:40)~衝立沢出合(5:50)~南稜テラス(7:20/9:00)~衝立沢出合(13:50)~懸垂下降地点(14:25)~一ノ倉沢出合(15:40)
参考になります!
雪渓がないときのテールリッジへの取り付きって、こんなスキマを下降しないといけないんですねぇ。
ちなみに、一ノ倉沢右岸の懸垂下降点から、鉛直方向に降りると、衝立沢出合よりも下流に行ってしまいます。一ノ倉沢の少し上流に向かって降りるとちょうど良いかもしれません。