阿弥陀岳北稜

  • 期間 2010-03-20~2010-03-22
  • メンバー 浦野(L,27期)、松井(26期)
  • 記録 浦野

3月20日(土)
スーパーあずさ(新宿駅AM7:00発)とバスを乗り継ぎ,美濃戸口へ。天候は快晴。気温も高い。美濃戸口(10:30発)から美濃戸山荘,南沢を経由し,行者小屋に14:30頃到着。テント設営後,明日の荒天を意識し,多少の風よけブロックを構築。行者小屋は営業していないが,管理人さんがおり,缶ビール等の販売は行っていた(幕代¥1000/人,缶ビール¥500/350cc缶1本)。テント設営後,松井さんはしばし休養。浦野はラジオ(FM長野が良くはいる)を聞きながら缶ビールで喉をうるおす。水場はないと思っていたが,文三郎道方面に多少歩いたところに水場があった(こんなことなら3L満タンの水を背負ってくることはなかった・・・)。厳冬期に凍結してしまうかどうかは不明。天気予報によると,翌日(21日)は,荒天。早々に停滞を決め,就寝。

3月21日(日)
天気予報どおり,夜から未明にかけて雨(湿雪)と風が非常に強い。シュラフの中に入っていても,風の音でほとんど眠れず,テントが飛ばされるのではないかと不安に思う。AM6:40起床。依然として,風と雪が激しい。朝食を終えた頃から少しずつ,天候も回復したため,AM10:00頃(この頃には,雪はやみ,風もおさまった),JPまで偵察に出かける。文三郎道との分岐(道標の近く。テン場からここまで約10分)を中岳沢方面(右)に進み,10分ほど歩いた地点で北稜支尾根に取り付く(顕著な目印はない)。もう少し早く北稜支尾根に乗ってもいいのだが,樹林帯のラッセルを少しでも避けたかった。北稜支尾根への取り付きは,北稜支尾根上(樹林帯)のラッセル回避との見合い,といったところか。
北稜支尾根に乗る(典型的な尾根であり,自分が尾根の背中にいることがよくわかる)と,北稜が右手に見えてくる。状況にもよると思うが北稜支尾根は,膝からすね程度の積雪量はあると思われる。順調に高度を稼ぎ,JPに到着。広場のような場所を想像していたが,それほど広くはない。偵察時は,我々の前に単独行の男性がいたが,その方は,更に登っていった。行者小屋からJPまで約1時間。本日の偵察はここまでとし,行者小屋までもどる。テンバ着12:00。午後はチビチビお酒を飲んだり,翌日の晴天を期待して,ルートの確認等をして過ごす。天気予報によると,天候は回復傾向にある。早めに夕食をとり,PM7:00頃には就寝。

3月22日(月)
AM4:00起床。テントの外を覗くと満点の星空。待った甲斐ががあった!準備を整え,AM5:55出発。この頃には明るくなっており,へッ電は必要ない。JPまでは昨日偵察しているので精神的なゆとりを感じる。AM6:40JP到着。JPからは20Mほど雪稜を歩き(特段問題なし),第一岩稜にとりつく。とはいっても,登っているときは,岩稜を登っているという意識はなかった。雪面から多くの灌木(ダケカンバ)が伸びている雪壁状であり,正直,どこが岩稜なのか分からなかった。アイゼンの前爪を効かせ,ピックを刺し順調に登る。この雪壁状を登り終えると,第2岩稜が目の前にドーンと見える。先行パーティーは2パーティー(5名×2パーティー)。AM7:05着。ここで1時間ほど順番待ち。我々の直前のパーティーは,東京北●山岳会の5名。ご挨拶をし,いろいろと参考情報を頂く。我々の後ろには,どうも一般道と間違えてここまで来てしまった男性の単独行もいたが,しばらくしたら,下降していった。下降は大丈夫かな。
AM8:05頃,浦野リードで登攀開始。第2岩稜は,正面左側にルートが2本あり,どちらを登ってもいけそう。今回は,左側ルートを行く。ビレーヤー用の支点(残置ハーケン)や,中間支点(ペツルボルト)がある。登攀開始してすぐに中間支点(ペツルボルト)にヌンチャクを掛け,クリップする。その後,右脚を大きく開き,アイゼンを効かせ登攀していく(さほど難しくはない)。岩を超えると,氷化した緩斜面を慎重に登り(多少のトラバースもあり),ピッチを切る(ペツルボルトあり)。ここで切らなくても行けるようだが,先行パーティーが切っているので,我々もここ切る。冬期は声が届かないことが多いので,マメに切った方が,登攀がスムーズに行くとのこと。
このピッチ点で,しばし待った後,セカンドの松井さんを引き上げる。松井さんが問題なく登って来たら,次は松井さんがリード。次のピッチは,岩,氷,雪,草のミックス帯。ピッチ点から右方向に若干のトラバース(2~3Mか?)した後,登攀するが,このトラバースがかなり悪い。このことを知らず前パーティーの方が簡単そうに登っていたので,「このピッチ簡単だから松井さんリードやって」と浦野が言ったが,松井さんは心の中でこのトラバースを通過するとき心の中で「おい,浦野!」と怒っていたようである(松井さん,すいません)。灌木で1ヶ所ランニングビレーをとり,無事ピッチを切る。松井さんから,「ビレー解除!」のコールが届く。アイゼンの前爪を効かせ,ピッケルを使い,シングルアックスで登攀。結構,息が切れる。ピッチ点は先ほどとは異なり,平坦な場所であった(このピッチ点まで1ピッチで登攀するパーティーもいるようだ)。ペツルボルトが2つある。
3ピッチ目は,浦野がリード。最初は,階段状であり,それほど難しくない。階段状が終わると雪壁状となる。先ほど同様,前爪を効かせ,シングルアックスで登攀。途中,1ヶ所,灌木でランニングビレーをとり,雪壁状は終了。続いて,ナイフリッジ。事前の情報どおり,長さは3~4Mなのだが,結構,怖い。慎重に通過した後,しばらく緩斜面を登り,平坦で安全な場所で,ピッチを切る。スタンディングアックスビレーで,松井さんを確保。松井さんが登攀した後,テルモスのお湯を飲みしばし休息。ここまで来れば,もう安心。天候は最高,眺めも最高!南アルプスから御岳,乗鞍,北アルプス,浅間山まで(他にもあり)が一望できた。このような瞬間は何とも言えない気持ちである。
ここからは,コンテで阿弥陀山頂を目指す。5分程度で,阿弥陀山頂。AM9:57,ピーク到着。ついにやった。昨年3月の阿弥陀南稜以来,1年ぶりの阿弥陀山頂。山頂には誰もいない。写真を撮り,AM10:05,下山開始。
しばらくは登ってきた斜面を下降し,その後,右方向(中岳コル方面)に下降する。先行パーティーがつけた踏み跡は明瞭であった。気温が高めで,雪が溶けつつある。中岳コルへの下降は,斜度が急であり,気が抜けない。ピナクルに,新しい捨て縄があったので,天候や視界しだいでは,部分的に懸垂下降で下降するパーティーもいるのだろう。斜度が急なところでは,ダガーポジションで下る。無事,コルに下降し(ちなみに,ずっとコンテのまま),そこから少し登り返した尾根(標高2610~2620くらい)で,ザイルを解き,尾根の背中を下降する。灌木(やはりダケカンバ)が生い茂り日陰であったためか,雪が締まっている。部分的に氷化しており,アイゼンを効かすには力強く踏みしめねばならない。強く氷化した斜面を下降している際,ずるっと滑り,右脚首が灌木に激突。その後も,尾根を忠実に下降し,尾根の末端に到着。その後,中岳沢(北稜支尾根側に少し登ったところ)をしばし歩き,文三郎道へ合流。AM11:20,テンバ着。
テント撤収に時間がかかり(外張りのスカート部分に乗せた雪が氷化していたため,シャベルでの解氷が困難だった),PM1:00出発。南沢(行者小屋から30分程下ったところに,北西稜の取り付きへと思われるトレースが明瞭についていた。青テープを巻いた樹木×1,黄テープを巻いた樹木×3が目印。入山時は,この付近の樹林帯に1パーティーが幕営していた)を下り,PM3:50美濃戸口着。PM4:32のバスで茅野駅に向かい,あずさで帰京。

昨シーズン計画した,阿弥陀北稜。春になる前に実践できてよかった。

JPへ
②JPへ
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JPから
③JPから


第2岩稜取付きからJP方向
④第2岩稜取り付きからJP方向


第2岩稜1ピッチ目
⑤第2岩稜1ピッチ目


3ピッチ目
⑥3ピッチ目


山頂
⑦山頂


山頂
⑧山頂


中岳への下降
⑨中岳への下降


中岳のコルから阿弥陀岳
⑩中岳へのコルから阿弥陀岳を振り返る

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