聖岳東尾根

  • 期間 2010-12-30~2011-01-02
  • メンバー L松本善(17期)、SL鈴木百(25期)、小林英(25期)
  • 記録 小林(英)

聖岳東尾根は聖沢登山口から少し行って北上する尾根に入り、椹島方面からの尾根を合わせて、白蓬ノ頭(2632.4m)~東聖岳(2800m)~奥聖岳(2978.3m)~前聖岳(3013m)と辿るルート。これを往復する。
森林限界付近にBCを設営して元旦の登頂を狙うが、確保が必要と最初から判断できるような状況なら登頂は見送る。また、1/3を予備日とするが下山時のトラブルを考慮すれば1/2のアタックはないという計画。事前の天気予報では期間中に寒波襲来、元旦は典型的な西高東低の冬型とのこと。

■12/29(水)
18時過ぎ、タクシーで沼平のゲートに到着。登山指導センターの方と話して、駐車スペースの傍らにテントを張る。入山祝いをして就寝。

■12/30(木)
7時の出発時には薄曇り(-4℃)だったが赤石ダムですっかり雪になった。11時に登山口に到着。
樹林の斜面を上がっていくと潰れた屋根が覗いている出会所(でかいしょ、と登山指導センターの方は読んでいた)小屋跡。右手に登る尾根にもテープが付いているが、そのまま一般ルートを行くと橋の架かった沢を過ぎ、ちょっと嫌なトラバースがある。積雪は脛から膝程度だが、時折チリ雪崩が落ちてくる。もう少し進むと一般ルートの指導標とそれに直交する尾根があり、これを登った。地形図では1418m地点を巻くように道があるが、実際は1418の北を通っているようだ。標高1520mでアイゼン装着。斜面の積雪は膝程度で木の根や倒木を多く隠している。1560mで傾斜が緩くなり、北上する大きな尾根に乗った。二重山稜っぽくなっていて、奥側が尾根本体の様子。
14時過ぎ、1700mにテント設営。くつろいでいると若い男性の4人パーティが下りてきて、東聖岳まで行ったが積雪と風に阻まれて撤退とのこと。日没後に雪は止んだ。

■12/31(金)
6:30出発。晴れ、-11℃。
尾根伝いに北上を続ける。急登ではあるが、昨日下りて来た4人のトレースがあるのでそれほど苦労せずに進めた。2250mを越えたところで椹島方面からの尾根を合わせて西に方向転換。ここには一般道と同様の指導標(黄色のプレートに矢印)の他、白蓬ノ頭の方向を示したり「ここはジャンクションピーク」といった表示板が樹幹に付いている。東尾根は下りでルートを誤りやすく、数年前の遭難事件を機に付けられたものだそうである。
ジャンクションピークを過ぎると雪が深くなり、ワカンに履き替える。
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2370mの等高線が閉じている手前端に4人パーティのものと思われるテント跡があった。荒地マークの平坦地から白蓬ノ頭へは、小さな鞍部からトレースが右に寄って行き自然に導かれた。
13時、白蓬ノ頭では素晴らしい景観が待っていた。東聖の奥に三角形の奥聖岳(本峰の前聖岳は見えない)、そこから兎岳を経て大きな赤石岳、真っ白な悪沢岳、笊ヶ岳と布引山の間から富士山、南には上河内岳、その奥に深南部の大無間、小無間・・・ 山座同定して20分ほどを過ごした。聖山頂には雪煙が上がり、明日の登頂可否はまだ分からないが、この景色を眺めただけでも来た甲斐があったという気分。
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風を避けて一段下(2630mの等高線内)に移動。そこから空身で偵察に出てみると、少し先にもテン場適地があるものの条件は特に変わらない。そこから樹林に入るルートが続いていることを確認した。森林限界も間近だ。
戻ってテント設営し、酒のツマミも夕食も普段より豪華な年越しの夜。ラジオで紅白を途中まで聴いて就寝。高度の上がった分寒いが、遠くに風の音が聞こえるだけの静かな夜だった。

■1/1(土)
5時過ぎ起床。晴れ、気温は未確認が -15℃以下だろう。登頂して安全地帯に戻るまでゆっくり休憩する余裕はないと思われるので寒気に備えて普段より余分に着込んだ。共同装備としてフライ(ツェルト代り)、30m補助ロープ×2、スコップなどを分担。各自アイスバイル、若干のスリング、カラビナを持ち、ハーネスとアイゼンを装着して、7時に出発。
昨日付けておいたトレースを進み、樹林帯で初日の出を迎える。昨夜の天気予報では初日を拝める地域は少ないと言っていたので幸先がよい。
15分程でトレースの先端に達し、あえて赤ペンキの方向ではなく右手にいったん下ってから尾根に上がることにする。しかし思ったより雪が深く、場所によっては腿まで潜る。赤ペンキはおそらく南側の高まり(地図で”2600″の数字の上)を通って尾根に繋いでいるのだろう。ともかく岳樺の疎らに生えた斜面を上がりきると、いよいよ聖岳へとまっすぐに続く稜線に乗る。稜線に上がれば雪が飛ばされて楽に歩けると予想していたのだが、案外と深く積もっていて時折はラッセルとなる。
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9時に東聖岳を通過。やせ尾根で風も出てきたが吹き落とされるような強さではない。雪面は平坦部では締まって歩きやすいが、斜面では潜る箇所がある。兎の足跡があるなと思っていたら、視界の先の斜面を2羽が駆け上がっていった。
9:40、2880mを通過。足元に岩が出てくる。左手の上河内岳にはレンズ雲(多少下の方に流れているが)が掛かっている。背後にもいつの間にか雲が出ていた。雲底はまだ高いが視界がなくなる前に安全地帯に戻らなくては。
少し下ってからいよいよ奥聖への登り。ここが聖岳東尾根の核心だろう。夏なら岩場と思われる箇所をアイゼンの前爪を蹴り込むように上がる。
急登を上がりきると奥聖から前聖が一望となる。鈴木、小林が小休止している間に松本が先行してトレースを付ける。後で聞くとこの時に登頂を確信したとのこと。
10:25 奥聖岳を通過。雲が下がってきて富士山を隠した。上河内岳のレンズ雲も崩れて山体を覆い始めている。幸い風は弱い。前聖~奥聖をピストンする人がいるらしく、トレースがあった。
11時、聖岳登頂。聖平から上がったらしいパーティがいたが、東尾根からは本年初登だ。-16℃、雲が広がりつつあるものの、雪煙を巻き上げるような風も吹かず、ここまで本当に天候に恵まれた。写真だけ撮って、悪天に掴まらないうちにと下山にかかる。
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奥聖からの下りはピッケルをダガーポジションで使い、適宜にアイスバイルも出す。もしかすると下りではロープが必要かと思われた箇所もこれで下りられた(ロープを出してもどこで確保するか--支点にしようにもピッケルも刺さらないだろう)。
雲の落ち着いているうちに東聖岳を越えて一安心。振り返ると山頂はガスの中。朝にこの状態なら登らないところだった。樹林帯まで戻ると小雪が舞ってきた。
途中、安全な斜面でラッセルの様子を写真に撮ったりなどして、13:30 テン場に戻る。本降りにならずに雪は止んだ。
時間に余裕もあることだし、明日の下山時間を考えて少し下っておくことにするが、行動の最後に小林が脱水でバテ気味だったため、休憩を兼ねてゆっくりと撤収。15:30、昨日見ておいた4人パーティの跡にテント設営した。

■1/2(日)
静かな夜が明けると今日も晴れ。無風、-12℃。冬季ルート取り付きのトラバースが嫌なので、下りは出会所小屋跡へ直接下る尾根を行くことにする。6時過ぎ出発。
12/30のテン場を過ぎると左手のピンクテープが出会所小屋跡への尾根へ導くと思われたが、あえて1600mまで自分たちの上りルートを辿り、そこから平坦な部分を経て改めて尾根を確認。ピンクテープはやはり右手の斜面から尾根へと続いており、下っていった4人のものと思われるトレースも残っていた。ルートとしては自分たちの辿った線よりこちらの方が一般的なのかもしれない。もっとも、樹に掴まって下りるような箇所もあったから上りもそれほど楽な訳でもないだろう。出会所小屋跡でアイゼンを外し、9時に登山口に戻った。
長い林道歩きではわずかな登りでもスピードが落ちるが、それでも12時過ぎに沼平着。さらに白樺荘に向かって歩きだしたところ、左手の斜面に小熊! ちょっとの間こちらを見つめていたが、やがて樹林に走り入って姿を消した。この時期にも冬眠していないのか。
登山口から20km近くを歩き通して、13:20 白樺荘に到着。この長丁場が今回の最大の難所だったかも。温泉で汗を流してバスに乗った。

注:2880m峰を東聖岳とする資料もあるが、文中では昭文社の山と高原地図に従って2800m峰とした。

<行程>
12/30 沼平7:00~聖沢登山口11:00~出会所小屋跡11:40~C1(1700m)14:10
12/31 C1 6:30~ジャンクションピーク9:40~白蓬ノ頭13:00~C2(2630m)13:30~進路偵察~C2 14:40
1/1  C2 7:00~東聖岳9:00~奥聖岳10:25~前聖岳11:00~C2 13:30-14:30~C3(2370m)15:30
1/2  C3 6:00~ジャンクションピーク6:20~尾根乗換え(1600m)8:10~出会所小屋跡8:40~聖沢登山口9:00~沼平12:00~白樺荘13:20

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