「残暑避け まだまだ続くよ ナメラ沢」
雁坂トンネル料金所横の駐車場に9:00集合。宇井さんが久しぶりの参加ということで、本科生の我々は自己紹介をした。9:15出発、沓切橋までは車道歩き。「雁坂峠」の歴史を感じる看板。秩父往還と呼ばれるこの道は日本最古の峠道として、江戸時代から大正まで秩父王滝村の繭を塩山の繭取引所まで運ぶ交易の道として使われてきたきたそうだ(下山時に通過した雁坂峠の看板より)。
今回のナメラ沢は笛吹川水系。甲武信ヶ岳の東に位置する破風山(はふさん 2,318m)へと突き上げる沢だ。一般的には前夜泊の日帰りとする場合が多く、また「天国のナメ、地獄の詰め」と紹介する本もあるようだ。今回は敢えて沢泊とし、ツェルトなどを活用した不整地でのビバーク訓練も兼ねている。さて、登山道に入ってから少し尾根を越えると、明瞭な「ナメラ沢」の看板。沢沿いに下りていき、装備を整える。
10:35入渓。陽射しもあるし、明るいナメの様子に心が躍る。
程なくして、今回の遡行で唯一の滝らしい滝、2段5m滝。水流も多く、右側から高巻いた。
その後は幅広い一枚岩の緩やかなナメが続く。この場面は40mナメだろうか。それぞれ水流沿いだったり草付沿いだったりを登っていく。多少の傾斜があっても、小さなくぼみにしっかり重心を乗せればフリクションが効くのはおもしろい。
13時過ぎ、1,680mの二俣を通過。左俣に進んで程なく、これは「10mボコボコ滝」だろうか。階段状になっており、難なく通過。2日目も含めて一度もロープを出すことはなかった。
少しルンゼ状になってきた。水流も少ない。そろそろ今晩の寝床を探そうかということで周囲を見渡しながら進行。地形図を見ると、1,800m手前の右手(左岸)の尾根が少しなだらかになっている。脚力のある男性陣3名、八重樫さん・中村さん・青栁さんが偵察に行ってくれて、トランシーバで状況共有。広くて良さそうだということで、14時前に沢から離れて尾根に上がった。
それぞれ平らなところを見つけ、ツェルトやタープの設営。笹が多く、思ったよりもフカフカな寝床をつくることができた。15時前、山塾テント村が完成。
青栁さんのタープの周りに集まり、石を組んで焚き火をすることができた。日が暮れるまで時間が長く、やかんを紐と木の枝でつるすなど、あれこれ工夫して楽しむことができた。一昨日がスーパームーンだったので、日が暮れても空は明るい。消灯したのち、21時過ぎから少し雨が降った。
翌朝は5:30集合。急斜面を下りて再び入渓。遡行図通り、1.900m付近から涸れ沢になってきた。左(右岸)の尾根に乗ることも考えられたが、藪が濃い可能性もあり、そのまま沢沿いを詰めていく。次第に傾斜が強く岩が大きくなり、よじ登っていくが結構ガレている。涸れた小滝を高巻きする際などに二度ほど大きめの落石もあり、フォールラインに入らないようお互い気をつけて進行した。途中大きく開けたのち、再び谷幅が狭くなる。最後は分厚い苔に包まれた岩と木の根の間を縫うようにしてよじ登っていく。かなりの急登だ。2,300m付近の稜線まで一直線に詰める。
もう少し、あと一踏ん張り、と声を掛け合いながら、段々と空が見えてくる。ついに、別の登山者の姿が見えた!やっと稜線に出た!嬉しくてたまらない。その登山者は甲武信から来たようが、藪の中から次々と人が出てくるのを見てたまげたようだ。
稜線を少し左(西)に進むと、南側に景色が開けた。ガスがサーッと晴れて、一時だけ富士山まで望むことができた!
時間は8時手前。装備を解除し大休止。
下山は雁坂峠の方向へ。まずは東破風山(2,260m)。その後2,289mの雁坂嶺。道標が二つあって何でだろうと思ったら、片方は埼玉県でもう一方は山梨県だった。そうか、県境だ!
低い笹の稜線歩きが心地よい。ところで、ここらの木が皆枯れているのは何故だろう。風が強いのだろうか。10時過ぎに雁坂峠を通過し、沢筋をめがけて下山開始。
落ち葉が多い。綺麗に姿を隠したカエルを発見。
少し傾斜のある細い沢筋を渡るところが二箇所ほどあり。一箇所は怪しいトラロープがかかっていて、その後大きな木の根を掴んでよじ登った。
11:50に沓切橋を通過。そこからはまた車道歩きだ。空はまだまだ真夏。陽射しがジリジリと暑い。
12:20、駐車場に帰着して終了。詰めはハードだったが、尾根に逃げることなくナメラ沢を遡行しきったのは達成感が大きい。
下山後は近隣のはやぶさ温泉にて汗を流した。
<行程>
9/2 雁坂トンネル料金所駐車場9:15~沓切沢橋9:55~入渓10:35~二俣(1,680m)13:10~幕営地(尾根上1,790m)13:50
9/3 再入渓5:40~稜線7:45~東破風山8:30~雁坂嶺9:30~雁坂峠10:10~沓切沢橋11:50~雁坂トンネル料金所駐車場12:20
<所感>
○田中
今回は不整地でのビバークがテーマの沢山行でした。各自ツエルトやタープでテーマ通りのビバークが出来たと思います。自分はなかなか快適で爆睡しました。懐かしの宇井さんと久しぶりに山行出来たのが嬉しかったです。
○宇井
転勤、介護、出産を経て山塾へ戻ってきました。沢登りは9年ぶりでしょうか。感慨深いです。初めて沢で泊まりましたが、シュラフカバーだけでは明け方に足先が寒くなりあまり眠れませんでした。これも経験ですね。全体的に優しいナメ滝で癒されました。不安定な岩だらけの詰めが一番面白かったです。
○秋永
ナメに対してフェルトソールが吸い付くような感覚があると、フリクションが効くようだ。ツェルトは、木の根や枝にスリングやガイラインを活用して綺麗に張れて満足。朝方は冷え込み、レインウェア上下とペラペラのライトダウンを着込むのみで我慢していたら変な夢を見てしまった。来年は釜ノ沢などに挑戦したい。
○鹿内
終わってみれば水が涸れてから詰め上がるまでがやや登攀要素があり楽しかった。やはり自分は岩登りが好きなようだ。ナメ滝は綺麗だった。
○八重樫
ナメラ沢は登攀要素もほぼなく、綺麗で開けているナメが続いて、癒される沢でした。詰めは大変でしたが…。また、初めてのツェルト泊で良い経験ができました。
○中村
きれいなナメ滝が多く、良渓であった。上流では倒木や堆積物も多く、沢の斜面に足を踏み入れたところ、足元に堆積した砂と岩が崩れて落石を惹き起こしてしまった。人が踏み入れていない箇所を遡行する場合、落石の危険も考慮した上で注意すべきであることを実感した。
○青栁
その名にもあるように、いくつものナメ滝を登る楽しい山行でした。ただ尾根に出る最上部は大きな岩も浮いていて気を抜けない難しさもありました。夜の焚き火とタープ泊は大変楽しかったですね。