硫黄山~羅臼岳

  • 期間 2023-07-19~2023-07-22
  • メンバー L田中(35期)、小林英(25期)
  • 記録 小林英

昨夏の大雪山~トムラウシ山に引き続き、同じコンビで北海道へ。
飛行機や宿を早めに押さえた日程優先の旅だったが、山行中は晴天に当たり、一般道ながら北海道らしいワイルドさを楽しめた。

■7/19(水)
女満別空港から知床エアポートライナーでウトロへ移動し、民宿たんぽぽに投宿。
夕食まで時間があるので散策に出る。堂々たるオロンコ岩(全体写真は下山後に利用した観光船から見た姿)に登ると、看板の下にキタキツネがいた。岬の向こうに今回歩く硫黄山から羅臼岳の山並みが見えている。
オロンコ岩オロンコ岩より

■7/20(木)
予約しておいたタクシーでカムイワッカ橋先のゲートまで(7000円)。カムイワッカから硫黄山登山口までの区間は「特例使用」の申請が必要(北海道オホーツク総合振興局 網走建設管理部 ⇒ https://www.okhotsk.pref.hokkaido.lg.jp/kk/akk/shiretoko_riyou.html)で、予めメール提出してある。先に出発して行く単独男性と挨拶を交わし、我々は9時半にゲートを通過。
傍らで刈り払いしている道を6~7分進むと硫黄山登山口(標高245m)。掲示されたヒグマ目撃情報によると、この先、新噴火口までの途中で目撃されている。
ヒグマ目撃情報
登山口を入ってだんだんに高度を上げ樹林帯を抜けると、道の上に落とし物があった。時間の経ったものも新しそうなものもあり、サイズから見てやはりクマなのだろう。
糞
旧硫黄採掘地(標高500m付近)では足元に硫黄の粒が散らばっている。ハイマツや岩の道を登りながら見上げると、緑のじゅうたんの間から噴気の上がっているのが見えた。気温は25℃程度だが、ひどく暑くて汗が滴り落ちる。
硫黄山の登り
「新噴火口最上部」看板(標高750m付近)の箇所は少し開けていて西側の海を見張らせる。すぐ上に見える稜線に出れば涼しいだろうとハイマツの間に踏み込むが、トンネルのように樹木の覆い被さる道で30分も息を切らせ、ようやくハイマツの上に頭を出してもまだ樹林。この辺りは稜線まで針葉樹林なのだった。
樹林の切れ間
沢出合(地形図999地点付近、硫黄川の水線の源頭)から硫黄山頂下までは涸沢を辿る。水溜りの残る岩盤やガラガラとした岩の箇所が多い。涸れ滝の巻きが2か所あり、上の方は巻き道も細くやや危険な印象で、この後追いついた単独男性によると、例年ならロープが張ってあるとのことだった。
沢地形の登り
ある程度風が通るので樹林より楽とは言え、適宜日陰で休憩しながら上がって沢地形を出た。(下の写真は南・1枚目~南西・2枚目。山頂方向は逆光)
硫黄山頂下硫黄山頂下
砂礫の道を上がると硫黄山頂への分岐があり、知円別岳の方へ進んだ先行パーティのカウベルが聞こえた。分岐から山頂へは岩がちで傾斜が強まり、足元の岩の間にチングルマ、イワギキョウ(?)、コエゾツガザクラ(紅白?)等々、様々な花が咲いている。
硫黄山の花硫黄山の花
14時半、硫黄山(1562.3m)に登頂。行く手の山々から海まで眺め渡せた。
硫黄山より
山頂から下りて分岐を南へ。凹地を前にして、山頂と凹地の間を西へトラバースした先に標柱が立っているように見えて進路に迷うが、薄い踏み跡の続くまま凹地の方へ下り、再び登りにかかると「第一火口分岐」の標柱があった。道の上にまた何かの糞を見て行くとやがて雪渓が現れ、その際を下りる(アイゼンを使うほどの長さ・斜度はなかった)と第一火口キャンプ指定地だ。雪渓から水が流れ出し、エゾコザクラが群落を成す。ここのチングルマは花の終わったものが多い。第一火口キャンプ指定地
先行パーティはこの先のキャンプ指定地を目指したらしく、上方の稜線からカウベルの音がする。ここに泊まるのは我々のみ。テントを張り、フードロッカーの近くで水を浄化、煮沸しながら、食事にした。第一火口キャンプ指定地

■7/21(金)
5:20に出発。第一火口分岐を経て第2前衛峰手前まで登ると「羅臼岳10KM」の標柱があった(後に確認したGPSトラックデータによると、距離11.0km、沿面距離12.3km)。ハイマツの間の道から一転して礫の稜線に入ると、いかにも火口壁と感じる。進路を塞ぐ岩を崩れやすい足元を気にしながら躱(かわ)すなど、昭文社地図の実線ルートとしてはなかなかに厳しい。礫上にはコマクサが咲いていた。火口壁の道
7時、知円別岳(1544m)下で休憩。ここはスマホが通じた。
南岳方向に下るとチングルマのお花畑があったりと快適。南岳(1459m)は登山道上に特に目印無し。山頂は少し離れた高まりなのかもしれないが、そこまでハイマツの藪で道は無い模様。二ツ池からオッカバケ岳、サシルイ岳と眺められる。
南岳より
二ツ池の一つ「天の池」は干上がっていた。「地の池」は水を汲むのは容易だが、美味しくなさそう。
二ツ池
オッカバケ岳と1450mの間を通り抜け、サシルイ岳に向けて下る途中にすれ違った単独男性に聞くと、三ツ峰キャンプ指定地の水場付近でクマ1頭を見たが人間を避けて去ったとのこと。
エゾカンゾウなど咲く湿地、草原から沢状地形に入って登って行く。枯れた沢の傍らで休憩中、急に水が流れ始めた。水流はその上の雪渓から出ていたが、雪渓下で栓になっていた雪が解けたのか。その雪渓は地図に「残雪時ルート不明瞭」とある通り先行者の足跡も判然としないが、真っ直ぐに登るとほぼ末端でまた道が現れた。ここもアイゼンは使用せずに通過。
サシルイ岳(1564m)下から、後方の硫黄山、前方の羅臼岳を眺める。
後方の硫黄山、前方の羅臼岳
ハイマツの中にエゾツツジなど見ながらガレ場を下り、草地の中に水流のある三ツ峰キャンプ指定地に12時到着。登山道が広くなっている箇所もテント設営可能だが、水流を跨ぐとさらに広くて快適な場所があった。テント場下の流れに設置されたパイプから出ている水はチョロチョロ程度。水流を5分程遡ったところに雪が残っていたのでその近くで汲んだが、草のカスなどゴミが多い。いずれにせよ浄化しなければ使えないが。三ツ峰キャンプ指定地の水場
そうこうしているうちに羅臼岳から下ってきたパーティが到着し、最終的にはテント4張、7人ほどになった。皆フードロッカーに集まって食事。フードロッカーは少し高いところにあるためか、スマホが使えた。

■7/22(土)
5:20に出発。三ツ峰の二つのピークの間に上がると、羅臼岳が圧巻。1508mピークには道が付いているようだが割愛した。
羅臼岳
羅臼平にはテントが1張、出発準備中だった。
岩清水分岐から山頂まで標高差200m以上の往復なのだが、クマに持って行かれては困るので、そのままザックを担いで上がる。岩清水は分岐の少し上で、抉れた岩壁の天井からコケを伝って幾筋かが滴り落ちていた。昨晩泊まり合わせた人の話では水が出ていることの方が少ないそうだが、今は手に受けて飲める程度の量。美味しいと聞いたが地図には「要浄化」とある。岩清水
羅臼岳最上部の岩場は、難しくはないがザックの重さが堪えた。
羅臼岳上部
7時半、羅臼岳(1660.0m)に登頂。周囲360°の眺望。山頂はスマホ可。
羅臼岳登頂
暫し眺望を楽しんで下山開始。岩清水分岐から屏風岩方面に折れてお花畑分岐への急斜面に掛かったところで、下の雪渓の途中で立ち止まっていた男性が「クマがいます」。見ると、我々からは300mも離れているだろうか、草原を2~3頭が移動しており、やがて樹林に隠れた。
クマ遠望
下の男性が動き出したので、我々もアイゼン(チェーンスパイク)を着けて雪渓を下った。
屏風岩まで緑の谷間の急傾斜。屏風岩はこれもまた火山的な断崖で、溶岩あるいは火山灰の堆積なのか細かな層が重なっている。
屏風岩
地図に水マークのある泊場では沢が合流している。大きな沢は鉄錆色の赤と硫黄の白が混じって物凄い。
泊場の沢
その先で地図に「渡渉前後のコース不明部分あり」とある箇所は、対岸のペンキマーク(下の写真中央の赤矢印)が判りづらい。
渡渉前後のコース不明瞭
沢から離れて一登りするのに汗をかく。樹林のトラバースに入ってもじりじりと照り付けられて非常に暑く、消耗した。ようやく第一の壁に辿り着くと、あとは緩やかな道でいくぶん楽になった。
登山口に13時下山。ヒグマ目撃情報を記入し、知床羅臼ビジターセンター経由で羅臼温泉野営場に向かった。
野営場の午後の受付は15時からなので、まずテント設営して、道路向かいの熊の湯で汗を流す。周辺に自販機など無いので、そこから1km程歩いたホテルで缶ビールなど調達。野営場では観光客用ゴミ袋を購入することでゴミ回収ボックスを利用できる。使用済の携帯トイレは、回収ボックスのうち燃えるゴミの隅に置けとのこと。野営場の周囲には動物除けの電気柵が巡らされており、安心してテント内で乾杯した。

<行程>
7/20 硫黄山登山口9:40~沢出合12:10~硫黄山14:30~第一火口分岐15:05~第一火口キャンプ指定地15:50
7/21 第一火口キャンプ指定地5:20~第一火口分岐5:55~知円別岳下7:00~南岳8:20~オッカバケ岳下9:50~サシルイ岳下11:25~三ツ峰キャンプ指定地12:00
7/22 三ツ峰キャンプ指定地5:20~羅臼平キャンプ指定地6:20~岩清水分岐6:40~羅臼岳7:30-8:00~岩清水分岐8:30~お花畑分岐9:10~泊場10:20~第一の壁11:40~羅臼岳登山口13:00

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