焼岳~白谷山

  • 期間 2023-03-18~2023-03-21
  • メンバー L小林英(25期)、田中(35期)
  • 記録 小林英

焼岳(南峰)から南下し、アカンダナ山、安房山を経て十石山から白骨温泉へと下りる縦走を計画したが、ラッセルとルートファインディングに時間を取られ、白谷山の先から平湯温泉へとエスケープした。
初日の降雪の後は好天に恵まれ、真っ新(まっさら)の雪面に足跡を刻むのは楽しい一方で、気力体力を削るものでもあった。

■3/18(土)
塩尻手前のトンネルを抜けるとあずさの窓外は一気に雪景色。松本でバスに乗車する際には湿った雪が盛んに降っていたが、中の湯では小降りになった。バス停から中の湯温泉旅館までのヘアピン道路を50分ほどかけて登るのに汗をかく。
旅館裏でスネまでの雪だが、トレースはあるのでアイゼンで出発。道路をショートカットして登山道に入る際、下山してきたパーティとすれ違った。
トレースを辿って新中の湯ルートを上がり、2037m地点から登りに掛かる手前(山と高原地図の「広場」の下)で幕営。

■3/19(日)
就寝中に雪は止み、今朝は気持ち良く晴れた。アイゼンを装着し、5時半に出発。
テントの先でトレースが左右に分かれている。先で合流するのだろうと斜面を登っている方を辿ると、テント場を作りかけたような跡で途絶えた。が、人の通った跡らしきものが先の急斜面へと続くのでそちらへと進むと、やがて尾根に乗った。ここで夜明け。トレースは完全に消えたので、ワカンに履き替える。

尾根を登って行くと、眼下に下堀沢源頭の土崖が見えた。焼岳北峰に至る夏道は崖の上を通っており、雪の時期に南峰を目指す場合も、その付近から谷を離れて尾根に乗る方法がある(自分の例 ⇒ 2020/1/2-3 焼岳(南峰))。その谷筋を小さな雪崩が滑って行く。我々と谷との間に昨日登ったパーティのトレースがありそうだが、そのままラッセルを続けた。

2318m地点の東側をトラバース気味に通過し、南峰直下の尾根に上がる。雪が薄くなり岩も出てくるのでワカンをアイゼンに替えていると、我々のトレースを辿って後続パーティが登って来るのが見えた。風に飛ばされたのか相変わらずトレースの無い斜面をなおしばらく我々が先頭を行ったが、やがて身軽な二人組が追い付いてきたので交代。北峰との間に盛んに噴気が上がっている。山頂間近の大岩は間を抜けるように登り(下の写真は先行した二人組)、10時前に焼岳(南峰)に立った。次々と到着するパーティの中のガイドさんと話してみると、今朝、テント場のような箇所で途絶えていたトレースは彼らのもので、今日の尾根ルートを取るつもりだったが雪が深いのでいったん下りたとのことだった。

山頂から西へ下りる。こちらに向かうパーティは他に無く、雪面も新しい。地形図に小さな池として描かれている窪み(今は雪に覆われている)を右手に見て尾根に上がり、地形図の境界線(岐阜・長野県境)を辿って南へ進む。しかし、2240mで南西に方向を変えると、急傾斜の上に時折踏み抜いて深く潜るなどして真っ直ぐに下りられなくなった。樹林のため2124mピークも判然とせず、左右に適当な斜面を探しながら下るうちに県境を外してしまった。

斜面を下り切ると2124mの北側で、スキーのシュプールがあったので少し辿ってみるが方向が違う。県境に復帰すべく南へ向かうが深雪と樹林に阻まれて思うように進めず、また、地形を見定めたり、古いトレースを追ってみると迷った跡だったりと、2124mを越えて2027mピークとの鞍部に下りるまでに時間を取られた。

既に14時半となり、今日中に白谷山を越えるのは難しい。この時点で計画完遂は無理と判断、明日平湯温泉へとエスケースすることを決定した。
2027mへの登りは雪が深いだけだが、下りはまた適当な斜面を探しながら足を取られながらとなり、白谷山との間の鞍部(1910m)到着は16時。周囲の斜面は樹林で雪崩の心配はないと思うが、雪面が少し高く、また樹木の間となる位置にテントを張った。

■3/20(月)
本日も晴れ。昨日と同じくアイゼンで5時半出発。白谷山(2188m)は標高差300m足らずだが、昨日のルート上からはそれ以上にそそり立って見えていた。
白谷山
取り付いてみるとラッセルの連続で、胸の高さの雪をピッケルで掻き落として踏み固める場面もしばしば。また、一昨日の積雪の下のクラスト面に立てると思った途端に踏み抜くと、体力ばかりか精神力も削られる。2000m付近で進路を阻む岩は左側を回り込んだ。

傾斜の緩む2050m付近で一息つくと、その先は尾根が細い。雪稜に足を置く位置に気を遣うが、ウサギトレースが概ね合理的で参考になった。

出発から4時間以上かかって、ようやく白谷山に登頂。山頂は風が吹いて寒いが、360度の眺望をほしいままにできた。西へ下りる尾根の木に赤テープが付いていたが、ルートがあるのだろうか?
我々は県境に沿って南へと向かう。60mほど下ると尾根は県境を離れ、進路は広い斜面となる。下りやすいところを選んで行くと西側にずれたので、アカンダナ山の北側鞍部にて修正。
ここから県境はアカンダナ山手前のピークへと150mほど登るのだが、急傾斜を嫌って東側をトラバースすることにした。しかし、ワカンに履き替えて踏み込んでみると、樹木に進路を塞がれる、木や岩陰の雪穴に嵌り込む、腐った雪の斜面に隠れたササで滑る等々、細長いピークをやり過ごして2060m付近で県境尾根に復帰するまでに相当難渋した。それでも時折スノーシューらしい跡を見たので、歩く人もいるらしい。尾根に戻ると足元の雪は比較的固く、歩きやすくなった。
2019mピークの西側を巻いて南西向きの尾根に入る。尾根の先の国道158号を狙ったのだが、下りられる箇所を探すうちに東にずれ、樹林の中を足元の悪さに悩まされて進路を修正しきれないまま安房平の西寄りに下り立った。

既に夕暮近いが、本日中に登山届コンパスの下山通知を出すべく、スマホ通話圏内を目指して移動。安房平から国道(冬季閉鎖中)に出てもまだワカンが有効な程の積雪がある。平湯温泉に向かってしばらく歩くと電波が入り、さらに温泉街の灯りが見える地点(安房トンネルの上)まで進むと安定して通話できるようになった。
平湯温泉まで行って宿を取るには遅いので、道路脇に幕営。食料は乏しいが、ガスが十分あるので水は好きなだけ作れる。

■3/21(火・祝)
松本行きバスの初便に乗ることにして、7時出発。
入山前にネットで読んだ記録には平湯へショートカットしているもの(ヤマレコ「2021/2/22 アカンダナ山・安房山西・東峰 (安房峠冬季閉鎖ゲート前から周回)」:道路が描く細いM字の足元、地形図に水線の入っている北側を横断)があったが、道なき道を行くのには飽き飽きしており、また時間の余裕もあるので素直に道路を進む。それでも最後のヘアピンカーブだけは省略しようとしたところ、下側の道路に設けられたフェンスの切れ目を探す羽目になった。
Googleマップの経路案内で幕営地からの所要時間44分のところ、80分を要して平湯バス停に到着。
松本では湯の華銭湯 瑞祥で入浴、食事を済ませて、あずさに乗った。

<行程>
3/18 中の湯温泉旅館14:30~2037m地点17:10
3/19 2037m地点5:30~焼岳(南峰)9:50-10:10~白谷山北鞍部(1910m)16:00
3/20 白谷山北鞍部5:30~白谷山9:40-9:55~アカンダナ山北鞍部11:30~2019m下15:10~安房平17:00~国道158号上(安房トンネルの上)18:30
3/21 国道158号上7:00~平湯温泉BS8:20

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