奥穂高岳~岳沢縦走(夏山合宿グループB)

  • 期間 2023-08-11~2023-08-13
  • メンバー L秋永(42期)、青栁(43期)
  • 記録 秋永

5月の机上講習から企画を進めてきた夏合宿。山域、ルート、メンバリングなど本当に色々と検討を重ね、最終的に我々グループBは、上高地から涸沢・奥穂高・岳沢への縦走を完遂した。
青栁さんは何度も行ったことがある一方で、私は初めての穂高連峰だ。さらに久しぶりの3日間の山行で、直前には滑落遭難のニュースも多く目に入ってきていたため、正直なところ緊張度は高かった。しかし二人でよく話し合い、天候にも恵まれ、達成感のある合宿となった。

■8/11(金・祝)
山梨県の青栁別邸に前泊。そこから上高地までは車で2時間程で、都内を早朝に出発するより楽であった。コロナ後の揺り戻しか、5:40の時点で沢渡駐車場に満車のマーク、バス待ちの長蛇の列も見える。我々は第4駐車場にぎりぎり停めることができた。バス停に並んでいるうち、幸いにも空っぽのバスが来て乗車でき、ほぼ予定通りに上高地BTに到着できた。
装備を整え、6:50出発。今回は縦走なので、二人とも極力の軽量化に努めている。水は1人あたり1.5L程度。私のザックは12kg弱、青栁さんにはテント装備をお願いし15kg程度だっただろうか。梓川沿いに、行き先の山々を眺めながら進んだ。
明神五峰から主峰(中央右の小さめのピーク)まで徳澤園までの途中に明神岳の五峰から本峰までを全て見渡せる箇所がある。実は今回の合宿企画では、山域を絞り込んだのちに明神岳というプランも考えた。結果、研究生以上の参加が見込めず見送りになったのだが。梓川からしっかりと見上げて、いつか行こうと二人で士気を高めることができたのは良かったと思う。
横尾までの道のりは一部工事中で、梓川を反対側に渡って迂回せねばならないので注意。先程まで観光客ばかりだったのが、突如我々だけになり気が引き締まる。パノラマコースの入口には、「屏風のコルを経由して涸沢へ至るパノラマコースは残雪のため通行できません」との札が。はて・・・少し立ち止まったが、雪の少ない今年にさすがに残雪は無いだろうと、進むことにした。

屏風のコルへの登りは、上高地からの標高差にして900mほど。塔ノ岳(ボッカ訓練)に比べれば大丈夫!と何度も言い聞かせるが、雲ひとつ無い晴天、南向きの斜面、無風で暑い。そして、人がほとんど入らないからか、アザミが人の背近くまで伸びて非常に歩きづらかった。手袋やアームカバーをし、ストックでかき分けながら進む。

辛い登りでも、ふと顔を上げるとたくさんのお花たちが。トリカブト、アキノキリンソウ、そしてウドの仲間だろうか。

ようやく屏風のコルに到達。初日の登りが終わって達成感! 青栁さんからオススメの展望ポイントを教えてもらい、少しだけ屏風の頭のほうに登っていく。初めて涸沢カールを見て、その雄大さに、じわ~っと感動が込み上げてきた。本当はもう少し登ると大岩がありもっと展望が良いらしいが、今回は時間の関係で先を急ぐことにした。この時点で既に14:30。

細尾根楽しい細尾根を進む。一部色づき始めたナナカマドも見られた。紅葉の季節にはさぞかし鮮やかになるだろう。ようやく風が通るようになって、楽しい尾根歩き。

ガレトラバース・・・と思ったのもつかの間で、トラバース区間に入ると、右側が切れ落ちたザレ場に出くわした。青栁さんによると、ここにはロープが整備されていたそうだ。そうか、「残雪」は無いけれど未整備ということか・・・ ちょっと足を乗せただけでパラパラッと石が落ちていくザレ場、大きい石がゴトッと動いてずれるガレ場。斜面のほうもどこを掴んだら良いのか分からない。私はこういう道に経験が無くて、相当ビビりながら進行。一つ越えてまた一つ・・・ 軽く6箇所くらいはあったと思う。

このトラバースはいつ終わるんだ、早く抜け出したいとめげそうになった頃、再び涸沢カールが目の前に広がった。ここまで気丈な青栁さんにだいぶ助けられた。もう少しでテン場!と気合を入れ直して進み、ようやく16:40に涸沢ヒュッテに到着。約10時間行動となった。
青栁さんオススメの端のほうにテントを張り夕飯。かなりの疲労度だったが、靴紐をゆるめたり服を乾かしたりしているうちに段々と元気になった。夜は星が綺麗だった。

■8/12(土)
本日も晴天。4:30出発のはずだったが、トイレに行ったり離れたテント管理所へ札を返したりしているうちに遅くなってしまい、5:00出発。ザイテングラート(「支尾根」という意味だそうだ)の登りは700m弱。両手を使ってよじ登る動作が増えてきて、風も心地よい。足場もしっかりしており、正直この登りが一番楽しかった。

涸沢岳はスキップしようかと迷っていたが、直感で先にピークを踏んでおきたいと思い、穂高岳山荘に荷物をデポして山頂へ。ここ数ヶ月は修行要素の強い山行ばかりだったので、久しぶりにピークらしいピークを踏み、しかも3,000m級ということで喜びが込み上げてきた!

北穂高岳、キレット、槍ヶ岳、そして遠くは立山連峰にうっすら剱岳まで見通せる。絶景に感動した。

南側に奥穂高岳。そしてその奥にジャンダルム方面。グループAは無事に通過しただろうか。その後、穂高岳山荘前の蛇口で飲料水を追加。100円で500mLいただけるのはありがたい。水の量を各自1Lと決め、今回も軽量化を意識して出発だ。3箇所の垂直鉄ハシゴでのすれ違いはさすがに混雑したが、幸いにも良識的な登山者が多く、お互い声をかけあって待ち合うことができた。

奥穂高岳山頂。岳沢のほうからはガスが上がってきた。下山を急ごう。

10:50頃、吊尾根からの下山開始。紀美子平までの標高差はわずか200mなのだが、2.5時間もかかってしまった。ザレ・ガレは無いものの、斜面を左手に岩場をずっとトラバースしていき、多少の登り返しなども。最初は前穂高岳も踏むつもりでいたが、スキップすることにした。ガスってきて展望は期待できないし、重太郎新道の下りでかなりエネルギーを使いそうなので、できるだけ余力を残しておきたい。紀美子平の手前でそう決めてからは心が楽になった。

重太郎新道は、大きな一枚岩に鎖がかかったところやハシゴが多い。切れ落ちたようなところは無いので三点支持をしっかりすれば問題ないが、感覚的には6~7割クライムダウンをしている感じで、最後には「もう岩場はおなかいっぱい!」と思うほどだった。

岳沢小屋が見えてきた。グループAメンバーの大きな笑い声が聞こえる気がする。既に杯をかわして盛り上がっているのだろう・・・ 声が聞こえるのになかなか高度が下がらない。17:00すぎにようやく岳沢小屋に到着、合流した。12時間行動となった。

■8/13(日)
最終日、5:30に岳沢小屋を出発。駆け足で下りていって、風穴の前で集合写真。

明神岳の取付も確認できた。7番の看板の前で、踏み跡が意外としっかりしている。
梓川のあたりで写真撮影なども楽しむ。河童橋から後ろを振り返ると、岳沢から奥穂高岳がよく見える。あんな高いところに居たのかと夢心地。天気・仲間に恵まれ、怪我も事故もなく3日間過ごせたことに感謝し、穂高連峰に向かって一礼。7:30に上高地BTに帰着した。

<行程>
8/11 上高地6:50~徳澤園~屏風のコル~涸沢ヒュッテ16:40
8/12 涸沢ヒュッテ5:00~ザイテングラート取付~穂高岳山荘~涸沢岳~穂高岳山荘~奥穂高岳~紀美子平~岳沢小屋17:10
8/13 岳沢小屋5:30~風穴~上高地7:30

<所感>
○青栁
前穂登頂はガスの為に断念しましたが、それ以外はほぼ予定どおりの山行でした。チームで互いに助け合い、怪我することもなく楽しく岳沢テント場に辿り着く事が出来ました。パノラマルートや吊り尾根の下調べが甘かった事は反省点ですが、結果的にはナーバスになり過ぎず前向きにトライ出来たのだと思います。
○秋永
1年ぶりの3,000m級かつ縦走で、本当に登れるだろうかと不安だったが、無事に踏破できて達成感がとても大きい。青栁さんに本当に感謝! 縦走のため、軽量化やエネルギー・水分補給にもかなり気を遣った。今回スキップした前穂高岳に来る時は明神岳から縦走したい。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>