■山のこと
剱岳は飛騨山脈(北アルプス)北部の立山連峰にある標高2,999mの山。富山県の上市町と立山町にまたがり、中部山岳国立公園内にある。日本百名山及び新日本百名山に選定されている。
日本国内で「一般登山者が登る山のうちでは危険度の最も高い山」とされる。これは、その一般ルートが、一服剱~前剱~本峰の間で、岩稜伝いの鎖場やハシゴのルートになることによる。カニのヨコバイ・カニのタテバイの鎖場が有名であるが、実際には、より容易な稜線で滑落事故などが発生している。また、クライマーと呼ばれる一流登山家も、その岩場や雪山で、多くの命を落としている。
氷河に削り取られた氷食尖峰でその峻険な山容は訪れる者を圧倒し、登山家からは「岩の殿堂」とも「岩と雪の殿堂」とも呼ばれている。南東の方角に日本三大雪渓の1つ、剱沢がある。北から東の方角には、大窓・小窓・三ノ窓など「窓」と呼ばれる懸垂氷食谷がある。飛騨系の閃緑岩と斑れい岩の硬い岩から構成され、それを輝緑岩が貫いている。山の上部は森林限界のハイマツ帯で、ライチョウの生息地であり、アオノツガザクラやハクサンイチゲなどの高山植物が自生している。
■コースタイムと感想
8月13日
(6:27)上市着=タクシ=(7:00)馬場島(7:30)-(14:40)早月小屋
朝からの晴天に感謝。馬場島では多くの登山者が山行の準備をしていた。試練と憧れの石碑にこの先の困難を思いつつ出発。
高度差1500mを最初は30分、以降は50分間隔で小休止を取りながら登る。登山口からいきなりの急登。以降、ずっと急登が続く。道に迷うところは無し。一定のペースを崩さずに登ったことで長い登りもなんとかクリアできた。また、途中で腿の筋肉が攣り、近くに居られた登山者から大さじ二杯程の塩を頂き、なめたら速攻で回復。以降は全く問題なく早月小屋まで歩き通せた。(こんなに効くとは。。。)長時間歩きに備えたリズム作りと新たに必要な装備を学んだ。
早月小屋のテント場は狭く、臨時で小屋前の広場に設営させて頂く。設営の後はビールで乾杯。食事の後で強い西日とガスの中、ブロッケン現象を初体験。夜は偶然見つけた下界の花火の鑑賞とペルセウス座流星の観察を行う。
8月14日
早月小屋テント場(5:00)-(10:00)剱岳山頂(10:40)-(11:00)カニの横ばい待ち-(13:00)カニの横ばい(13:20)-(14:15)前剱-(15:35)一服剱-(16:00)剱山荘-(17:15)剱沢小屋-(17:30)剱沢キャンプ場
今日も朝からの晴天に感謝。剱岳まで標高差800mの急登。昨日に引き続きペースを一定に進む。
剱岳山頂は大賑わい。座るところも無いほどの大混雑。さっと記念撮影をしてしばし登攀隊の挑んでいる岩場を眺める。360度の大パノラマと歩んできた道を振り返り、大いなる達成感を得る。
カニの横ばいは大渋滞。待つ間に雷鳥の親子とも遭遇。アルパインツアーサービスのガイドがさっと交通整理を始めてくれたお陰で少しずつ進み始める。(こういう早い判断と行動は見習わなければと思った)
登山事故のほとんどはここで発生しているとのこと。恐怖で動けなくなった登山者を助けるにも自分の安全確保ができていないと難しい。フェラータ安心セットは自分のためだけでなく、他人を助けるためにも携行すべきと学んだ。次からは標準装備に加える。
当日はテープ・シュリンゲで簡易ハーネスを作ることを教わったが、シュリンゲ・ダイアパーだけでなく、チェストハーネスと組み合わせた方が良さそう。
参考)
http://www.yamanakama-sirius.org/oyakudachi/gijutsutext/JuusouRopework/jRopewo
傍らに咲く稚児車の花と実に早くも秋の到来を思いつつ、剱沢へ急ぐ。
剣山荘では生ビールで乾杯。これが冷えていて旨かった。通り雨をやりすごして、剱沢キャンプ場へと歩を進める。
15日(分隊)
剱沢キャンプ場6:00-6:50剱御前-8:00雷鳥沢キャンプ場-8:55雷鳥荘-9:30ミクリガ池温泉10:50-11:15室堂=アルペンルート=15:05信濃大町=18:01八王子=18:36新宿
今日も晴天に感謝。剱御前にて本隊と別れた分隊は一路、室堂を目指す。
雷鳥坂から雷鳥平への眺めは広々としてとても気持ちがよく、遠くに薬師岳が見えた。
雷鳥沢キャンプ場も多くの人で賑わっており、最後の石段を登りきって、雷鳥荘を経て、ミクリガ池温泉にて入浴。ここは9時から入浴可能。大混雑と思いきや30分遅れたお陰で、ゆったりと入れた。ここの温泉はいつ来ても気持ちよい。入浴後は生ビールで乾杯。立山の手ぬぐい(紺)を購入。(前から欲しかったので満足)
その後、室堂からアルペンルートを経て、特急あずさにて関東へ戻った。運が良かったようで各交通機関とも満員状態だったが座って帰れました。
急登をしっかりと味わえた山行であり良い経験ができた。癖になりそうで残る二大急登への挑戦を胸に、次の山行計画を考えていこうと思う。 (ここまでの記録:荒田)
15日(本隊)
剱沢キャンプ場6:00-6:50剱御前7:00-8:37真砂岳-9:44富士ノ折立-10:00大汝山10:30-10:50雄山—11:45一ノ越山荘12:00-12:45立山室堂山荘-12:55室堂13:30=15:15富山
剱沢テント場から剱御前までは、お花畑や雪渓が見事。天気も良く、青い空と夏山特有の緑とのコントラストが美しい。時折振り返れば剱岳本峰が正面に見え、その堂々たる山容に圧倒された。昨日までの奮闘ぶりが思い返され、達成感と安堵感で自然と顔がほころんだ。
剱御前にて分隊を見送った後、本隊は真砂岳・立山を巡り室堂を目指した。
真砂岳までの道程は緩やかなアップダウン。後立山連峰の眺望が素晴らしい。昨年唐松岳から剱岳を眺めて「いつかは行こう」と言っていた自分を思い返すと感慨深く、来年はどの山にいるのか想像すると楽しくてたまらない。程なく真砂岳山頂に到着。小さな標識しかなく、文字も消えかかっていて見逃しそうであった。
小休憩の後、内蔵助カールを左に見つつ、富士ノ折立へと向かった。見上げると結構な登りに見えたが標高差はあまりない。落石を起こさないように気遣いながら一気に登り、そのまま大汝山まで歩みを進めた。
大汝山避難小屋前に荷物をデポし、山頂に向かったり、トイレ(とても綺麗)に行ったりと長めの休憩を取った。さぁ出発だという時に私のズボンに何か着いているとのことで取って頂くと、なんとエゾゼミであった。羽が透明で鳴き声がうるさいのが特徴らしい。苦手なセミが何故私の足に・・・と一瞬たじろいだものの、初めて見たのでラッキーと思えた。
滑落しないよう注意しながら進み、すぐに雄山に到着。さすがお盆休み、山頂は人でごったがえしていた。鳥居の前で記念撮影をして雄山神社内をさらりと見学し、三角点にタッチしてすぐさま下山開始。雄山から一ノ越の間はやや急で、石を落としそうになる斜面。その上多くの子供達が絶え間なく登ってきており、大変気を遣った。
一ノ越から室堂までは、道は舗装され、雪渓にも階段が作られていた。快適に下っていると、最後の最後でまたもやライチョウ(親1、子3)に遭遇。長い長い道程を歩いてきたご褒美のように感じた。
帰路には富山経由を選択。ケーブルカーの線路沿いにはカモシカも現れた。今回はお天気といい、希少動物といい、本当に恵まれた山行だった。富山駅近くの観音湯へ立寄り旅の疲れを癒し、各々家へと帰った。
長い長い急登は、また登りたいと思わせる良いコースであった。重い荷物を背負ってカニの横ばいを通過することに不安を感じていたが、フェラータセットは精神的に大変役立った。無線で連絡を取ったり、山頂で他のチームのことを思いながら尾根を見下ろしたりは初めてで、集中山行ということを感じられた。
帰宅後気になったのは、雄山神社峰本社の入り口にあった魚や船の木彫りの飾り。山なのに何故だろうと思った。また、登りでずっと見えていた赤谷山は剱の歌に出て来るらしい。そういった歴史や文化も知って登ると、より一層山を楽しめるのだろうと思った。
メンバーの皆様に助けられ、無事楽しめたことに感謝感謝の3日間でした。(記録:福本)