北岳バットレス 第四尾根主稜

  • 期間 2013-10-12~2013-10-14
  • メンバー L土方(26期)、田口(22期)
  • 記録 土方

■10/12(快晴)
白根御池小屋でひとりテントを張り、南アルプス(日本登山大系)を読み耽る。
僕は9月の3連休、ひとりで白峰三山を縦走した。
北岳バットレスをやりたかったのだが、パートナーが見つからなかったからだ。
小屋周辺はバットレスをやるパーティで盛り上がっている。
羨ましいなと思いつつ、翌朝、草すべりから白峰三山を縦走したのだった。

10月に入り半ば諦めかけていたのだが、田口さんが3連休行けるとのこと。
もちろん僕は大喜び。
既に作成済みの計画書の日付と共同装備担当だけ変更して金澤さんに提出。
計画が受理され、いよいよバットレスをやることになった。

北岳バットレスとは、北岳の東面にある大岩壁をいう。
山頂からの標高差は約600メートルで、南アルプスを代表する岩場。
バットレスとは建築用語で「控壁」「胸壁」の意味で、小島烏水が名付けた。

白峰三山 014

僕らがトライするのはバットレスの中でも人気のクラシックルート第四尾根主稜だ。
しかし、2010年10月に城塞ハング右側周辺が崩壊し、最終ピッチⅢ級のルートが登れなくなってしまった。城塞ハングを登るしかないのだ。
城塞ハングは日本登山大系によると、「フリーでⅥ級はある」、と記載されている。

前日の夜、錦糸町駅に集合した僕らは田口さんの車で芦安へ向かう。
0時半頃に芦安の市営第3駐車場に着き、車中泊。
朝目を覚ますと満車になっている。

乗合タクシーに乗って広河原へ。1100円。

白根御池小屋に到着後、下部岩壁の偵察へ向かう。
以前はbガリーがよく登られていたようだ。
しかし、崩壊の影響でc沢が埋まってしまい、bガリーからのアプローチが難しくなってしまった。
そこで、僕らは最も易しいとされる第五尾根支稜を登ることにした。

20分歩いて二俣に、二俣から30分ほどでバットレス沢に到着。
バットレス沢は大岩が目印だ。

北岳バットレス第四尾根主稜 007

第五尾根支稜にはc沢、d沢の中間にある中間尾根から向かうことができる。
しばらくの間、周辺を歩き回って中間尾根を探しだし、踏み跡を確認。
水流のあるc沢を過ぎたところにあるケルンが目印。

北岳バットレス第四尾根主稜 011

第五尾根支稜への道すじが明らかになったところで小屋に引き返す。

■10/13(快晴)
翌朝、3時起床、4時出発。
既に多くのクライマーが続々とバットレスへ向かって歩いている。
僕らは事前に偵察していたおかげで、暗闇でも迷わず中間尾根に入ることができた。

北岳バットレス第四尾根主稜 013

中間尾根の樹林を抜けて草原に出ると、バットレスが眼前一杯に広がる。

北岳バットレス第四尾根主稜 016

下部岩壁には既に行列ができている。
僕らも行列に並んで登攀の準備を始める。

■下部岩壁(第五尾根支稜)

北岳バットレス第四尾根主稜 017

1P目
ランペを左上し、支稜の左側面からフェースを直上、リッジに乗る。
登山靴で登ったためかなり緊張する。
このクツ使い込みすぎてて、靴底がフラットソールになっとる(笑)
Ⅲ級のルートだし、下部岩壁から四尾根取り付きまでは歩くからってことで登山靴にしたんだけど。
クライミングシューズを履くんだった・・・トホホ。

2P目
緩やかなリッジを登って、だだッ広い緩傾斜地帯へ。
田口さん曰く、「bガリーからのアプローチより遥かにカンタン」とのこと。

3P目
ルンゼを直上。

■横断バンド~第四尾根主稜取り付きテラス
コンテで横断バンドを歩いて、c沢へ。
横断バンドは落石を起こしやすいので要注意。
c沢右岸には多くのパーティがリッジへの取り付きのため順番待ちしている。
確かにリッジから3Pで第四尾根取り付きテラスに到達できる。
しかし、僕らはヒドゥンガリーからテラスへ向かう予定だったので、他パーティを横目にc沢を詰めあげる。
c沢を詰めた右岸には「4」と赤ペンキでかかれた岩があり、ここがヒドゥンガリーの取り付きである。

北岳バットレス第四尾根主稜 028

北岳バットレス第四尾根主稜 029

このヒドゥンガリーは下部岩壁をbガリーからアプローチした場合に登られるのが一般的だ。
そのせいか、この日はガラガラで貸し切り状態だ。
ヒドゥンガリーからのアプローチを選択したことにより、一気に他パーティを抜き去り、無人の第四尾根主稜取り付きテラスへ躍り出る。
いよいよ第四尾根主稜の登攀が始まる。

■第四尾根主稜
1P目(30m Ⅴ-)
土方リード。
クラックから緩やかなリッジとなるルート。

北岳バットレス第四尾根主稜 033

テラスには多くのパーティがいて、ギャラリーの熱い視線を背中に感じながらのスタートとなる。
クラックにフットジャムを決め、カム(キャメロット#3)をセット。
左壁のクラックに一段足を上げてフットジャムを決め、左側のピトンにランナーをセット。
冷静に核心を乗り越える。
乗り越えた先は緩やかなリッジを歩いて1P目の終了点となる。

2P目(35m Ⅲ)
田口リード。
やさしいフェースを直上し、バンドを右に回り込んで終了。

北岳バットレス第四尾根主稜 034

3P目(20m Ⅲ)
土方リード。
リッジの右側面のフェースをクラック沿いに登って行くルート。
残置ピトンが豊富で必要ないのにカムでランナー取ったりして楽しみながら登る。
ロープを半分出したところでリッジに乗る。
40mの予定だったが良いビレイポイントがあったのでピッチを切る。

北岳バットレス第四尾根主稜 036

4P目(10m Ⅲ)
田口リード。
緩やかなリッジ。
あっという間に核心の手前に達する。
リッジでピッチを切らずに、ここまでロープを伸ばせばよかった。

5P目(30m Ⅴ)
土方リード。
狭いクラックが走る白いフェース。核心のピッチ。
とにかく足の置き場がない。
ふと左下の岩に目をやると、足がかりになりそうなスタンスがある。
思い切って左足を乗せて壁に取り付く。

北岳バットレス第四尾根主稜 037

細かいホールドをカチ持ちしてランナーをセット、右手を伸ばしてカンテを掴む。
フェースからカンテに乗り移って、核心は終了。
その後はカンテラインを登ってマッチ箱のコルの手前でピッチを切る。

マッチ箱のコル
10mの懸垂下降。
懸垂支点は2つあるが奥にある強固な懸垂支点を使うことにする。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

左壁を降りていくと、ビレイポイントに達する。

6P目(30m Ⅳ)
土方リード。
ピラミッドフェースによく似たフェース。
クラックを手掛かりに登る。

7P目(20m Ⅲ+)
田口リード。
枯れ木テラスへ。

8P目(15m Ⅲ)
土方リード。
ナイフリッジのトラバース。
本来であれば、Ⅲ級のルートを登って終了となるはずだった。
しかし、このルートは崩落して登れなくなってしまった。
第四尾根から脱出するためには、このトラバースを経由して城塞ハングを登るしかない。
トラバースはナイフリッジを両手で掴んで、カニのごとく少しずつ左側へ移動する。
スタンスがないので足はスメア。

9P目(30m Ⅳ+)
土方リード。
いよいよ真の核心、城塞ハングである。
見た目には、「予想してたよりは簡単そう?それにハングというかチムニーなんだけど。」という印象。
赤いピトンに第一ランナーをセットして、登攀開始。
チムニーに入ると、狭いわ、上部がハングなので背中は反り返るわで居心地はよくない。

北岳バットレス第四尾根主稜 044

田口さんは後続パーティと談笑している。のん気なもんだな~(笑)
チムニーにはピトンが左右二箇所あり、また、得体の知れないルートなんで両方にランナーをセットする。
左右の岩を良く見てスタンスを探り当て、ハングを乗っ越して核心は終わり。体感でⅣ+。
テラスに出たところのハイマツをビレイポイントにしてフォローを引き上げる。

全てのピッチを終え、田口さんとガッチリと握手。
大休止を取ったあと、登攀道具を片付けて北岳山頂へ向かう。
稜線まで10分、稜線から10分で北岳の山頂だ。

北岳バットレス第四尾根主稜 052

山頂から肩の小屋、草すべりから白根御池小屋に下る。

■10/14(快晴)
白根御池小屋から広河原へ下る。
乗り合いタクシーが多いので、すぐに芦安へ向かうことができた。

【行程】
・10/12(土)
芦安(8:30)~広河原(9:00)~白根御池小屋(10:10)~中間尾根偵察~白根御池小屋(16:00)
・10/13(日)
白根御池小屋(4:15)~第五尾根支稜取り付き(6:00)~第四尾根主稜取り付きテラス(8:25)~終了点(12:35)~北岳山頂(13:35)~白根御池小屋(16:00)
・10/14(月)
白根御池小屋(6:20)~広河原(7:55)

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