今年は雪が少ない。関東平野で雪が降れば近場の丹沢山塊で雪山歩きができるかと目論んでいたが、そんな気配も全く無い。雪山の経験がまだまだ足りないなかで、やはり積雪期の八ヶ岳基本ルートを一つでも攻略しておかねばと思い立ち、企画した。
当初は土曜日の予定だったが、ピンポイントで全国的に雨予報となり日曜日に変更した。前日の雨は山中では雪のはずだ。どれほど積雪しているだろうか、ワカンは要るだろうか(結局省略した)などと、準備期間に色々考えるのも勉強になった。
当日は完全な無風快晴。今回もお天気に恵まれた。降雪直後で柔らかい雪(前日分で40~50cm程度の積雪か)だったが、予想よりは圧雪されていた。道を作ってくれた先行者たちに感謝だ。ただし、日当たりの良い山頂付近の岩場は岩が露出しており、ピッケルが刺さらない。1月のアイスクライミングで習ったようにピックとアイゼンの前爪で通過するような部分もあった。また午後になると雪がくさり始めて、滑る危険が増すことを感じた。一日を通して様々な雪質を体験し、早出の重要性を改めて理解することができた。
以下、写真多めで振り返りたい。
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前日午後に東京を発ち、茅野のスーパーで食材を買い込んだ。八ヶ岳山荘の仮眠室に宿泊。フリースペースは24時間使えるし、一泊2,000円で二段ベッドの部屋に宿泊できる。「仮眠室」とは言えないくらい快適なクオリティに感謝。前夜祭を充分に楽しんで、就寝。
当日は5時に出ようとしていると、山荘のフロントが開き、宿泊者はコーヒー無料とのこと。折角だし、いただくことにした。山荘のオーナーに雪質やルートの注意点などを聞きながら準備をした。空も明るくなり、ヘッデンを付けずに5:25に出発。
美濃戸山荘でアイゼンを装着。今回は南沢だ。北沢よりも起伏があって、歩きやすいような気がした。
いよいよ赤岳とご対面。文三郎ルートの急登をゆく先行者が見える。蟻のようだ。なかなか進まない・・・きっと相当難しいトラバースなのだろうと(思い込んで)、怯む。
大同心・小同心、先月登った硫黄岳(⇒2023/2/23-2/25 八ヶ岳・硫黄岳~天狗岳も見える。9:00少し前に行者小屋に到着。続々と人が増え、多くはここでアイゼンなどを装着。
雲ひとつ無い空。景色に見とれていたら・・・
間違えて尾根に乗らずに沢筋に入ってしまった。阿弥陀岳に向かうトレースにつられてしまったようだ。10分強ロスしたが、阿弥陀岳北陵の偵察になった。5人くらい登っていたと思う。ビレイ解除!登ってこい!のコールがよく聞こえる。
急登。一歩一歩、よっこらせと足を上げる。雪が柔らかくて踏ん張りづらいところもあった。ようやくトラバースの入口。下から見上げた時はかなり恐い場所に見えたが、実際は斜度はキツすぎず、一歩ずつ落ち着いて進むしかないと割り切った。
昨年4月に発生した雪崩の走路でもあり、慎重に進む。すれ違い時の踏み外しは要注意だ。通過後に振り返って、ようやく安堵。
文三郎尾根を登りきり、分岐点に立つ。下り口から見下ろしてみると結構な高度感。今日はまだキレット方面からのトレースは無いようだ。
11:30ごろ、ついに登頂!グッと感動が込み上げる。360度の展望で、北は、なんと劔立山まで見通すことができた!
北峰(赤岳頂上山荘)に立ち寄って休憩をしてから下山開始。すると、山頂直下の岩沿いのハシゴ(ほぼ埋まっている)を降りた先で、中村さんが足を滑らせた! 5メートルほど滑っていく。後ろを歩いていた私は「ロープーー!ピッケルーー!」と叫ぶことしかできなかった・・。道から落ちそうなときに緑の補助ロープを掴んで止まれた。冷や汗だった。そこは雪が薄く踵のキックステップが効きづらくなっていた。私は怯んで後ろ向きになり、前爪キックステップで通過した。
再びトラバース区間に。行きと比べ、落ち着いて阿弥陀岳を眺めることができる。あまりに雄大で、純粋に格好良いと思った。中岳へ向かうトレースがあって途中で消えている。沢に下りたのか、それとも引き返したのか。いつかはここの縦走に挑戦したい(高橋さんは先日ソロで踏破している⇒2023/3/3-3/4 八ヶ岳・阿弥陀岳~赤岳~横岳~硫黄岳)
行きの急登は、つまり帰りの急降下。日当たりがよく無風で気温も上がったことから、雪がぐずぐずになってきた。階段状のところを大きく崩しながら下りていく。
雪が、無い・・! 昨日の降雪も下の方では霙(みぞれ)に近かったのだろう。南沢の一部や美濃戸山荘から下では土が出てしまっている。
午前6:00と午後3:00のやまのこ村の様子。同じ日とは思えない。こんなに融雪が進むとは!
出発から10時間15分の行程で八ヶ岳山荘に帰着した。オーナーさんにも挨拶でき、再びコーヒーをいただいた。次に来るのはいつだろうか。きっと、季節を問わず何度もお世話になるだろうと思いながら、「また来ます」と告げて帰路についた。
<行程>
美濃戸口5:25~美濃戸山荘6:15~行者小屋9:00~赤岳11:30~行者小屋13:10~美濃戸山荘14:50~美濃戸口15:40
<所感>
◯中村
今回の山行は天気も良く無風だったため、ほとんどの行程をハードシェルでなくソフトシェルで行動しました。行者小屋から文三郎尾根に取りつくと一気に急勾配になりペースが落ちましたが、全体を通して快適な登山でした。登頂後、下りの急斜面で足元のステップが崩れて数メートル滑り落ち、秋永さんをビックリさせてしまうということがありました。今後はより慎重にアイゼン歩行をするように気を付けたいと思います。
◯秋永
赤岳には無雪期(昨年10月)に一度登っている。そのときに文三郎道の下り口を見ており、こんなところを雪の中下りられるのかと思っていた。今季は1月に阿弥陀岳(⇒2023/1/21 八ヶ岳・阿弥陀岳中央稜)から赤岳を、2月に硫黄岳(⇒2023/2/23-2/25 八ヶ岳・硫黄岳~天狗岳)から赤岳・阿弥陀岳をそれぞれ見ており、ようやく南八ヶ岳エリアを立体的に捉えることができた。今回のザックは12kgと軽めに抑えたものの、積雪期に標高差1,400m・日帰りというのはやはりハードだ。体力・筋力を万全にして臨む必要がある。次は横岳や地蔵尾根、東側の各尾根など、一つずつ攻略していきたい。