今回、冬季バリエーションルートのデビュー戦として、本科生のみで大同心稜に挑戦した。
「連れていってもらう」ではなく、「身の丈にあったチャレンジをしたい」にこだわった企画。
事前に講師の大先輩方に相談をし色々助言していただき、また二人で話し合って装備や計画を何度も見直した。13日に降雪があり、本番14日は先行者もおらずノートレースとなったため、大同心基部での撤退も大いにあり得たが、今回も天気の神様に恵まれ、無事に登頂し帰ってくることができた。今年1本目の自主企画として、とても印象深い。
以下、写真と共に振り返る。
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■1/13(土)
八ヶ岳山荘に車を停めた。同日に自主山行に来ている硫黄岳組(⇒ 1/13~14 八ヶ岳・硫黄岳)とも顔を合わせ、また会いましょうと挨拶。10時頃、軽アイゼンをつけて出発。13:50には赤岳鉱泉に着いた。降雪が強まってきたが、翌日のルートの確認のため大同心沢入口へ。上の写真のように沢側(右手)と、今回進むべき尾根側(左手)に分かれるところがあり、トレースを確認できた。尾根側にさらに10分くらい登ったところで、確認を終えて引き返した。帰り際に、青栁さんの真新しいピープスのビーコンを使って1回だけ簡単に捜索練習。風雪も強く寒いので急ぎテントに戻り、翌日に備えた。夜は豚汁。
■1/14(日)
3:30起床。5:30発のはずが少しもたついてしまい、5:55出発。昨晩の降雪で平均20cmくらいの新雪か。大同心沢から尾根に上がり、しばらくはトレースがあり安心していたのだが、途中でその足跡が消え、先行者が居ないことが判明。気を引き締めて高度を上げていく。
日が昇り、硫黄岳、阿弥陀岳などが綺麗に見えてきた。樹林帯上部は傾斜も強く、風で飛ばされた新雪が草木の上に深く溜まり、ステップが切りにくい。
いよいよ、大同心基部に到着した。雲稜ルートの取付きで準備をするクライマー2名を発見。小同心への長いトラバースなど周囲を観察しながら、体調、気力共に問題ないことをお互い確認した。ほぼ無風の快晴、アタックできそうだ。
今回いちばんビビっていた最初のトラバースの下り。その場に立ってみると意外と幅があり、新雪もなく大丈夫そうだったので意を決して進行。
その直後はルンゼの入口が雪深く、太腿くらいまであった。ステップを切るにも新雪か緩いので、二人で相談した結果、ロープ(今回のために青栁さんがべアールの30mを購入)を出すことにした。すぐ左上の壁が南稜ルートの取付きでハンガーボルトが見えたので、そこで始点を取りムンターで確保。岩角で支点をつくり、交互にルンゼを登っていく。
最後のピッチ。ここは安全なテラスなので写真を撮る余裕があった。ロープを出した後の合計4ピッチのうち後半2ピッチは岩の手がかりが多く、雪も薄く締まっていたのでロープをしまっても良かったのだが、安心感を優先した。
すぐに噂のチムニーが現れた。手がかりも多くお助けロープもあった。落ち着いて乗っ越したら、もうあとは広場だ。
抜けてきたルンゼを振り返る。あんなところから出てきたのか!
実は今回、最初に計画したのは横岳への縦走だった。そこへのアプローチを一捻りしたくて大同心稜にしたのだが、調べれば調べるほど大同心稜だけでも登り切れたら大成功という考えに変わっていった。前日まで二人で相談していたことだが、改めて大同心ピークをゴールとし、感動のビクトリーロードへ。
山頂からの360度絶景は遠く北アルプスまで綺麗に見渡せ、本当に感動だった。
さて、ここから硫黄岳までの縦走へと気持ちを切り替えたが、爆風のため1.5時間かかってしまった。風によろけたり、まぶたが凍りかけたのか瞬きしづらくなったりと心折れそうになったが、青空の下に気を強く持って進行。
硫黄岳山頂にて。
赤岩の頭からは去年の経験通りほぼ無風で、さっきまでの暴風(たぶん平均15、ときおり20m/s?)が嘘のよう。阿弥陀北稜や赤岳、横岳から大同心の稜線を何度も振り返りながら下山した。
テントと荷物をデポした赤岳鉱泉に戻る。疲れもあったのか撤収に時間を要し、15:20発。結局八ヶ岳山荘に戻ったのは17:50に。最後の林道でヘッドランプになってしまったのが反省点だが、本科生2名で挑戦し無事に帰ることができたので、達成感が大きい。
<行程>
1/13 美濃戸口10:00~美濃戸山荘11:20~赤岳鉱泉(幕営)13:50
1/14 赤岳鉱泉5:55~大同心稜基部8:35~大同心11:15~硫黄岳13:00~赤岳鉱泉14:20-15:20~美濃戸口17:50
<所感>
○青栁
お誘いいただいた時は「雪山のバリエーションはまだ早いのでは・・・」と思っていましたが、行ってみると想像したより易しいルートで、好天にも恵まれて最高の山行になりました。
○秋永
ちょうど2年前の1月に冬山を始めて、2年でここまで挑戦することになるとは想像がつかなかった。昨年のアイスの講習と阿弥陀中央稜の経験から、アイゼンの前爪を岩場にかけ、ピッケルをダガーポジションで使うことには不安がなく、ルンゼに入ってからはビビらずに進むことができた。横岳の縦走はいずれ挑戦する。