槍ヶ岳北鎌尾根、無名山塾に入った理由の一つ。
北鎌といえば、「孤高の人」加藤文太郎や「友を捨てるにしのびず」と書き残した松濤明。今回は無雪期ですが心情は一緒です。
計画では9/18下山予定でしたが、コンディションがよく、一日早く下山できました。
【結論】(無雪期北鎌踏破に必要なもの、北鎌コルまでを前鎌と称す)
1.体力
沢登り、高巻き、急登、ルートファインドのための偵察、クライミング、水場がない等々、てんこ盛りなので。
2.ルートファインディング
前鎌は踏み跡が薄いし、あっても間違っている。ルートをミスるとグレードが上がる。
3.グッズ
・沢靴:水俣川を15回以上渡渉するので。
・チェーンスパイク:前鎌には悪い草付きが多い。
・バイル:同上。我々は軽量化のため、ミゾーハンマーを代用した。
4.幸運
・水俣川の水量が股下くらいまでであったこと。躊躇なく渡渉できて時短になった。
・曇り気味であったこと。我々は各自に水5Lで何とか足りた。これがピーカンだったらやばかった。
・パートナーが強力であったこと。体力的に超人で、さらに精神的に仏のように安定していたので。
【詳細】
1.水俣川から千天出合
沢の地形に沿って、渡渉しまくる。15回渡渉した。軽量化のため、自分は沢足袋(後で履き替え)、駿谷さんはラバーソールの沢靴で最後まで通した。
今回、水量が基本的にひざ下、深いところで股下だったのは幸運だった。最初のつり橋も使わないで川の中を歩いて行った。
2.千天出合からP2
出合はゴルジュなので高巻いた。ピンクテープが要所にあり、わかりやすい。しかし、高巻き自体は悪く、滑りやすい草付きのトラバースが多く、気が抜けない。
P2取付きから尾根方向に踏み跡がついている。尾根ではさらに明瞭な踏み跡。ただし、倒木で遮られて迂回する箇所が多かった。高度を上げると踏み跡は徐々に
傾斜を増し、木の根にぶら下がりながらよじ登っていく。ここは水平距離700mで垂直距離500m、平均斜度35度強の急登だ。
3.P2から北鎌コル
夜間は雨模様だったので藪は濡れている。上下レインウェアでスタートした。P2とP3のコルは藪漕ぎで進む。そのうち、P2と同様の急登になり、木登りが始まる。
4.北鎌コルからP10
P8までは250mの急登。1か所フィックスロープがある。
5.P10から北鎌平
P10からは岩尾根、やせ尾根のトレースだ。今日は槍の穂はガスの中だが、北鎌平はよく見える。今日のゴールだ。
P13までは明確なピークナンバーはわからなかった。コルにどのルートから下るか、ピークへどのルートから登るか。登ったり下ったりしているとP13についた。
時刻は14時、少しまったり休んでよもやま話に興じた。2テンなら張れるスペースがあり、ここで宿泊しようか悩んだ。電波が入ったのでYahoo!天気で雨雲レーダーを確認すると「16時から雨」との予報。でも、何故かノリノリになっていて北鎌平まで進むことにした。後で後悔した。
駿谷さんは尾西のごはん、自分はスープ春雨を食して睡眠した。
6.北鎌平から槍の穂
もう後200mくらいでおしまいと思うと嬉しい。
7.帰り道
横尾でジュース、徳澤でソフトクリームを食べたことしか覚えていない。
<所感>
○駿谷
北鎌尾根は体力さえあれば大丈夫、といった類の情報がネット上では散見されるが、これはミスリードする表現だと思う。
落ちたら一巻の終わりとしか思えないリッジ上で、脆い岩場と悪いザレ/ガレが連続しており、これらに対して或る程度の耐性がないと普通に泣きだすレベル。気力体力がともに充実していなければけっして来てはいけない場所だと感じた。
実際に我々の登攀中に一人、下山したころに一人が同ルートで滑落していたようだ。もしかすると2021年のこのエリアの地震の影響がまだ残っているのだろうか。
とにかく無事に帰ってこれてよかった。
なお、朝は300kcal程度のどん兵衛、夜は0kcalの春雨で2日半をしのいだ田中さん、下山後は体重が4kg減っていたらしく、この脂肪燃焼力にはたまげました(私は1kg減)。
<データ>
■9/14(木)
信濃大町 | 18:00 | |
竹のや旅館 | 18:10 | 4,800円(素泊まり) |
焼鳥とりしん | 18:30 | 焼き鳥が最高 |
■9/15(金)
信濃大町駅バス | 5:15 | 1,500円、2023年8月から七倉山荘までアルピコバスが開通【祝】 |
七倉山荘タクシー | 6:00 | 2,400円(4名乗り合わせで600円/人) |
高瀬ダム | 6:30 | なんと高瀬ダムまで2,100円! いままでは信濃大町からタクシーで16,000円かかったのに! |
出発 | 6:45 | |
湯俣山荘 | 9:00 | 湯俣山荘は建設中だった。伊藤新道に行く人たちが10名くらい準備していた(人気)。我々は水俣川を渡渉して青嵐荘で情報収集。 |
出発 | 9:45 | |
千天出合 | 11:50 | |
P2取付き | 13:00 | 4テン2張り規模のスペースあり |
P2 | 15:00 |
■9/16(土)
GPSの高度 | 地図上の高度 | |||
P2 | 4:50 | 2,123m | 2,150m | 我々はP2の肩でテン泊、2テン規模のスペースしかない。 |
P3 | 6:00 | 2,310m | 2,337m | ルート上に2テン1張り。ピークはルートから離れていた。 |
P4 | 6:40 | 2,480m | 4テン2張り、2テン1張りのスペースあり | |
P5 | 7:50 | 2,468m | 巻いた | |
P6 | 8:50 | 2,529m | 2,540m | |
P7 | 9:15 | 2,516m | ||
北鎌コル | 9:27 | 2,477m | 4テン1張りくらい | |
P8 | 10:50 | 2,724m | 途中に2テン1張り | |
P9 | 11:20 | 2,744m | 2,749m | ピークに4テン2張り、下部に4テン1張り |
P10(独標) | 12:57 | 2,894m | 2,899m | 手前に4テン1張りスペースが3か所 |
P11 | 13:16 | 2,887m | ||
P12 | 13:43 | 2,873m | 2,880m | |
P13 | 14:24 | 2,870m | 2,873m | 2テン1張り、以降ところどころに2テンスペースあり |
P14 | 15:20 | 2,881m | ||
P15 | 2,980m | 巻いた | ||
北鎌平 | 16:17 | 2,960m | 4テン4張りくらい行けるのではないだろうか | |
■9/17(日)
北鎌平 | 5:20 | 2,960m | |
槍ヶ岳 | 6:30 | 3,180m | |
槍ヶ岳山荘 | 7:40 | ||
出発 | 8:00 | ||
小梨平 | 14:30 | 日帰り入浴(14:00-16:00、800円)を目指してひた走った。 |