残雪期の合宿その一、今年の行き先は栃木県の北の端、大佐飛(おおさび)山地だ。いくつものピークを越えて最高峰である大佐飛山(1,908m)を目指すルートは、藪が多いため残雪期に登るのが望ましい。初日の夕刻から翌日の朝にかけて強風と共に降雪があり、2日目は雪が吹き付けるなか、黒滝山をゴールとして引き返した。とにかく今年は積雪が少なかったが、天候の変化により夏、冬、春の3つの季節を味わう山行となった。
■4/8(土)
那須塩原駅から板室温泉行きのバスに乗る。我々だけの貸切りだ。穴沢バス停で降り、装備を整える。雪が少ないことは分かっているものの、練習も兼ねて全員がビーコンを装着した。1.5km程ののどかな畑道を通り、光徳寺の横(575m付近)から登山道に入った。
雪が...無い! 長いことただの夏道が続く。水が作れるだろうかと心配が募る。百村山(もむらやま)から先、ピークごとに標高差100~150m程度の急登があり、落ち葉の溜まった泥道を登るたびに、奥地の大佐飛山がますます遠く感じられる。しかし、途中にカタクリの群生地があり、薄紫の花を見かけると少しは癒やされる気がした。
1,321m付近でようやく雪渓を発見。泥々かもしれないが水は作れそうだ、と少し安堵。そのまま歩みを進め、山藤山付近(1,575m位)でようやく十分な雪量となり、テン場を決定した。
日差しはあるがかなりの強風のため、スノーブロックをしっかり積んで3張りのテント(5人用、3人用、2人用)を密集させた。山塾テント村の完成だ。
昨年の守門岳の時のように雪のテーブルを作って外で夕飯を食べることはできなかったが、5人用テントに8人が集まった。強風の轟音に驚きながらも、水作りを教わり、共同炊事(ペミカンからの豚汁)、宴会を楽しむことができた。
■4/9(日)
夜中じゅう風雪が強かった。翌朝は3時起き。共同の朝食は水不足を懸念して高橋さんが用意したパンとチーズとソーセージだ。さて、かろうじて携帯電話がつながるので、SCW-天気予報/観測情報で雲行きを確認。昨晩見たときよりも天候の回復が遅れる予報だ。晴れの方向に向かうことは確実だが、この大人数で全てのピークを戻らなければならないことを考え、黒滝山をゴールにピストンすることに決まった。一つだけテントを残して6時に出発。来た時に土だったところもすっかり雪に覆われている。右(北)側から吹き付ける風雪が強く、目出し帽やフードを被っても耳や頬が痛い。
出発から1時間半弱で黒滝山(1,754.1m)に登頂した。天空の回廊と言われる西村山~大長山~大佐飛山方面は樹林に隠されて見えない。次回までのお預けだ。
さて下山時には、夏道から外れたルートを探索してみる。普段ならば藪が濃く通れないところも、積雪により楽に通過が可能だ。テン場に帰還し、撤収して下山を開始した。昨晩からの降雪により、かなり下のほうまで雪がついていて昨日と同じ道に思えない。天候もよくなり春の暖かい日差しに照らされ、いよいよ残雪期らしい山歩きを楽しみながら高度を下げていった。
光徳寺からの下界の道のりは昨日以上に暖かさを感じる。ミツマタ、桜、桃、椿、レンギョウ、タンポポと、沢山の鮮やかな花が青空に映える。次に大佐飛山を目指すときには近隣の男鹿山や日留賀岳からの縦走など工夫しようと話し合いながら、穴沢バス停に帰着した。
<行程>
4/8 穴沢バス停9:25~光徳寺9:50~百村山12:10~三石山13:00~サル山14:05~山藤山15:10(C1)
4/9 C1 6:00~河下山7:00~黒滝山7:25~山藤山8:30~サル山9:45~三石山10:35~百村山11:15~光徳寺12:50~穴沢バス停13:10
<所感>
○平
到達できなかった天空の回廊までアプローチが長すぎ。行きのカタクリ街道に心が慰められました。
○高橋
朝食の食担を務めたが、雪解けが早過ぎる今シーズン、幕営地に残雪があるのか不安で仕方がなかった。朝5時出発と聞いて雑炊からパンに変更した。雪は少なかったものの、アイゼンワークやピッケルワーク、滑りやすい下りの足の置き方など勉強になった山行だった。
○秋永
今回の合宿から共同炊事が再開となり、夕食(豚汁ペミカン)を担当した。なかば訓練も兼ねて水などの液体を多めに背負った。初日に21kgのザックで6時間登れたことはひとつの自信となった。人数が多いときに、引き返す計画やアイゼンの装脱着のタイミングを決めるのは難しいと思うが経験を積んでいきたい。
○八重樫
初の雪上テント泊。強い風雪の中でのテント設営など勉強になりました。登りの時は全く雪がなかったが一晩で一気に積雪していて、改めて登山計画・準備の大切さを知った。
○鹿内
雪山テント泊、累積標高1,600mなどはじめて尽くしの山行だった。風雪も強く、個人山行だったら撤退していたレベルなので大変良い経験をさせてもらった。
○藤木
雪上テント泊設営方法、防寒対策や準備品など学ぶことが多い山行だった。