無名山塾が所属する埼玉県山岳・スポーツクライミング協会(SMSCA)の冬山遭難防止研修・講習会に参加した。山行ではないものの、学びを蓄積し、他人にも的確に伝えられるよう、記録として掲載したい。
■12/10(土)
初日は主に救護人の手当てについて、体勢変更・観察・止血・固定・梱包・搬送といった一連の手技を教わった。以前に消防署の上級救命講習を受けたことがあったが、その際は街中でのAEDの扱いに重点が置かれていたのに対し、本講習会では山岳救助ならではの場面想定のもと、沢山の実践を交えて学ぶことができた。
サムスプリントで頸部、三角巾で上腕部を固定。三角巾の代わりにレインウェア、止血棒の代わりにストック・スリングで骨盤周辺を止血・固定。
ストックとザックで連結担架を作り、ログリフト法で要救護者を載せる。頭部はザックのショルダーベルトで固定が可能だ。
担架のストック部を持ち、持ち上げる。6人程必要。挙上は簡単だが、実際に傾斜のある山道を歩き続けるのは難しそうだ。
サムスプリント・三角巾・包帯を使って、上腕部や下肢の固定を練習。手足の負傷部位にサムスプリントを当てる場合、負傷していない側で予め形を整えるのがポイント。挟んだり巻きつけたりと自在だ。
■12/11(日)
午前は埼玉県警の山岳救助隊員2名による講義を聴いた。埼玉県の山岳遭難の実態と傾向、そして救助隊員の方々が経験してきた印象的な救助事例について、教訓を交えつつお話しいただいた。
午後は梱包、搬送の実践。
マット、シュラフ、ツェルト、レインウェア、プラティパス(湯たんぽとして使用)等々、持ちものを活用して保温し梱包する。
レインウェア等の上着を裏返しにしストックに通すことで、担架になる。
搬送にも様々な方法があるが、ザックを逆さにし要救護者に履かせることにより一人で背負うことも可能。立ち上がるときに両脇に支えは必要だが、意外に担げることが分かって驚いた。
最後にチームでのシミュレーション。組織登山を想定してリーダー役、連絡役、記録役を定め、要救護者発見からの一連の動きを本番さながらに実践した。
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2日間を通して、山岳救助ならではの考え方や身の回りの道具の活用法について学ぶことができた。大事なのは自らの安全を確保したうえで救助にあたること。レインウェア・ツェルト・ストック・スリングなど一般的な登山用具をうまく組み合わせることで、充分なファーストエイドになること。
そして一番印象に残ったのが「実際の場面に遭遇したら、人だかりができ混乱した状況になっています。そんなときに、『私達は救助の心得がありますから、任せてください!』と、多少強めに言い切って、救助にあたってください」という講師の言葉だった。今後、どれほど自分たちが安全に行動しても、自パーティーで要救護者が出る可能性もあるし、他パーティーの怪我・事故場面に遭遇することもあり得る。そのようなときに気丈にふるまい対応できるよう、今後も積極的に機会を見つけて復習したい。