応用ステップ「残雪期の山 その2」の行き先は、飛騨山脈の後立山連峰の北側に位置し長野県と富山県にまたがる杓子岳(2812m)。基本的に積雪期でないと登ることのできないバリエーションルート「杓子尾根」から登頂し、白馬大雪渓を下降する2泊3日の計画だ。晴天に恵まれたが、2日目は13.5時間の長時間行動となり、急斜面での登攀、岩雪ミックス、ハイマツ漕ぎ、強風、雪渓下降と多様な状況で経験値を高めることができた。稜線で雷鳥5羽に出会うことができ、登頂後の喜びもひとしお。同時期に入山した白馬岳主稜組3名も幕営地で合流し、賑やかな山行となった。
■5/3(火・祝)
電車組は11:41白馬駅着のあずさ5号にて集合。12:00発のバスに乗り猿倉バス停へ。猿倉付近では雪が緩みクラックも目立つ。
身なりを整え登山口より出発。北俣入という沢沿いに進み、標高差にして300m登る。天気も良く足ならしにちょうど良い。1時間程で白馬尻に到着し、幕営開始。
一方、新宿より高速バスに乗車した穴井・秋永組は、ゴールデンウィークの大渋滞で2時間遅れ、矢田Lが駅で待ってタクシーで猿倉に向かった。15:30に入山し16:30合流、先発組が整地してくれたところにありがたくテントを張り、共に雪のテーブルを囲んだ。20時就寝。
■5/4(水・祝)
3時起床。1時過ぎから強風がたびたび吹き荒れ、今日は予定通り進めるか心配が残る。主稜組は早々に出発していった。朝食をとり5時出発。幸いにも晴天。1550m地点より杓子尾根に向け東側から登り始めた。
藪を見つけてようやく休憩。
1700m地点くらいからより一層傾斜が増す。高橋・平両名は途中からダブルアックスに。キックステップ、ダガーポジションで登り続ける、振り返ると我々の足跡が。急斜面につき休める箇所が少ないので、1.5~2時間近く歩き続けた場面もあった。
岩雪ミックスの細い尾根やハイマツを漕ぎながらのトラバースも出てくる。11:55 ジャンクションピークに到達し、残るは稜線を登り詰めるのみ。少し過ぎたところで二番目を歩いていた秋永は矢田Lにアンザイレンしていただく。
13:30 皆で揃って杓子岳登頂。風があまりにも強いので集合写真だけ撮って早々に下山を開始した。
ここからは一般ルートということで本科生が先頭で歩く。下山といっても丸山まで登り返し。途中でアイゼンを外した。
また、2回・合計5羽の雷鳥に出会うことができた。残雪期らしく羽毛の生え変わり時期で、見事に景色に溶け込んでいる。
白馬岳は今回は時間がないので見送る。主稜組はとっくに下山しているだろうか。16時、白馬岳頂上宿舎近くで再びアイゼンを着け、一気に大雪渓へと下降を開始した。
幸いにも日没前の18:30に白馬尻に帰還。主稜組が暖かく迎え入れてくださった。
■5/5(木・祝)
5時過ぎ起床。風も止み、太陽が眩しい。天気も良いので雪のテーブルを囲み朝ごはん。大雪渓ルートを登る人々を見送りながら、テントをしまい8時出発。9時には猿倉バス停に着き、山荘で各々炭酸飲料を買って下山の喜びを分かち合った。
主稜組と揃って集合写真
<行程>
5/3:猿倉バス停12:50~白馬尻(C1)14:40
5/4:C1 5:00~ジャンクションピーク(2620m)11:55~杓子岳13:30~丸山15:30~大雪渓~C1 18:30
5/5:C1 8:00~猿倉バス停9:00
<所感>
◯穴井(39期)
GWの往路バス利用は避け、電車の予約をお早めに! 先頭を矢田Lに任せっ放しだったので、一声挙げるべきだった。最大風速15メーター程度なら割と普通に行動出来るとわかった。GWという時期のためか雪のコンディションが良かった。ガリガリの氷に近い雪質だったらもっと時間がかかったかもしれない。
◯平(40期)
残雪の北アルプス、云(ウン)年ぶりに行けました。風が強かったものの山頂までは終始ステキな展望で、気分が盛り上がりました。前回は時期が早かったせいか、凍っていて怖いところもあったのに… 来年もアルプス行きたい。
◯高橋(41期)
初めての雪山バリエーションとなる杓子尾根。切れ落ちた稜線歩きに不安はあるものの、ダブルアックスで臨んでちょっとした乗越や急登に大活躍したが、シャフトが長い縦走用のピッケルと補助のハンマーが最良の選択だったかもしれない。稜線では強風ともろい岩屑にてこずったが、皆で登頂できてよかった。強風の中での雪稜登攀は今後の山岳人生で貴重な経験になるあだろう。昨年のGWはクライミングジム三昧だったが、今年は大きな経験と思い出ができた。
◯秋永(42期)
残雪期の登山2度目にしてバリエーションルート、標高差1500m以上、13.5時間行動と、夏山でも未経験のことを一気に経験した。強風のたびに怯え、ピッケルを持つ手もキックステップで蹴り込むふくらはぎもプルプルで力が入らなかったが、両手両脚で気合いで登り続けた。登頂前の1時間は矢田さんにアンザイレンしていただくと気を強く持って進もうと思え、また後ろから高橋さんが声をかけてくださり大変心強かった。いずれは主稜にも挑戦したい。