自主山行として白馬岳主稜を計画した。
本科応用ステップの杓子岳と同じ日程となったため、ベースキャンプを同じくしてお互いの健闘を祈り、反省会という名の祝杯を共にあげることができた。
■5/3(火・祝)
新宿からあずさ5号に乗り11:41白馬駅到着。白馬駅直通のあずさは1日1本運行している。ありがたい。コロナによる規制が無いGWは2年ぶり。あずさは満席で立っている人も多く見られた。白馬駅から12時発の猿倉行きバス2番乗り場。猿倉まで約30分。
明日杓子尾根を登る本科隊とも合流し、猿倉からキャンプ地白馬尻小屋まで約1時間半で到着。高速バス利用の本科メンバーは大渋滞で遅れて到着した。
2日から3日にかけて寒気が入り天気が荒れる予報であったが、幸い早く通り過ぎたのか、この先の予報は強風ではあるが気温は高めで快晴。雪のテーブルと椅子で明日の作戦会議。
陽が沈むと一気に体が冷える。しばらく粘ったが、明日の朝早いのでテントへ移動し夕飯、20時就寝。時折突風がテントを揺らす。明日風は落ち着いてくれるだろうか。
■5/4(水・祝)
2時起床。各自朝食をとり、ヘルメットにライトを装着して3時半出発。冷え込みはないが、雪は締まっている。
別の3人パーティと抜きつ抜かれつを繰り返す。人気のルートだけあって、GW前半も沢山の人が入っていてトレースは明瞭。このトレースがなかったらかなり条件は違ってくる。
一箇所ルートミス。雪庇をトラバースする間違ったトレースがうっすら付いており、そちらへ足を進めてしまった。木の脇を直登するのが正規ルートだった。足場はつま先ほどの深さしかなく、ほぼ垂直の壁を5mほどトラバースし、垂直に2m登り、またその上の雪庇をトラバース。ここが今回の核心部だったかもしれない。非常に怖かった。
急登に次ぐ急登。登り登り登り。クラック多数、露出した岩、ハイマツを数箇所通過する。すぐ右側の谷に表層雪崩が2回起きた。シュルンドの上をそーっと通過する。融雪が進み、いつ崩れるか。それは運でしかないのか。
昨夜と同じ突風が吹き、ナイフリッジ上での横風は緊張が走る。
その後も急登、ナイフリッジ、突風が幾度も続く。最後の雪壁は見えるがなかなか辿り着かない。もうヘロヘロ。
アックスを打つ腕にも力が入らなくなる。キックを繰り返すふくらはぎもプルプル。
9:40、ようやく雪壁取付き。先行2パーティの順番待ち。50mロープでギリギリ、60mあれば問題ないようだ。数メートル下部でザックにもたれかかり、しばし休憩。なんとか体力を取り戻す。先行パーティのリードの声がビレイヤーに聞こえないらしい。下部で休んでいる我々にはよく聞こえる。取付きの岩が音を遮断してしまうようだ。
トランシーバーを準備、テストOK。50mロープで駿谷さんリード。山頂手前にスノーアンカーとアックスで支点を構築し、ロープを張る。田中リーダーがトランシーバーで呼びかけるが駿谷さんからの応答がない。下部で待機していた次のパーティの方が登っていいと言ってますと教えてくれた。田中リーダーはタイブロックで登る。大野は最後にアンザイレンで引き上げてもらう。岩から少し身を乗り出しトランシーバーで呼びかけると応答があった。トランシーバーも岩に遮断されていたようだ。
この雪壁の斜度は60度。これまで登ってきた数箇所の急登と大差はないが、長いため途中で力が入らなくなる。ロープはありがたい。とにかく一歩一歩慎重に登る。
やったー着いたー!!と同時に爆風に迎えられる。登頂11時。約7時間半の行動だった。この爆風の中で引き上げは大変だっただろう。
ロープをすぐに片付けて山頂へ数メートル移動。奇跡的に人がいた。妖精か?お互い写真を撮りすぐに白馬山荘まで下りる。
妖精は白馬山荘へ入って行った。我々はその下の頂上宿舎まで下り、風を避けて補給、暖かいマサラティーを飲んでしばし休憩。杓子組は今どのあたりだろう?
大雪渓の綺麗な雪を土嚢袋に詰めて、シリセードを混ぜながら1時間で白馬尻のテント村に到着。
無事に帰ってこれた安堵感と疲労で思考も弱まり装備解除やら何やらゆっくりとして、祝杯のビール。このビールはほんと美味かった。
<反省点>
トラバースルートに関しては、セカンド以降の方が先を見通せることが多々あるので、ルート選択に関してもっとコミュニケーションをとればよかった(少なくとも自分は先行者に付いていくだけの状態だった)。
<装備に関するメモ>
ダブルアックス推奨。縦走用と登攀用の2本であれば、下に突くこともできて使い勝手が良さそう。
<行程>
5/4:白馬尻BC3:30~雪壁取付き9:40~白馬岳山頂11:00~大雪渓12:00~白馬尻BC13:00