松本さんから足慣らしで我が無名山塾顧問の岩崎さんの本にも記載されている鳥屋待沢に行かないか?とお誘いをいただき、二つ返事で決まった今回の山行。松本さんと私は10年前入塾した時の講師と本科生と言う師弟関係、そんな私も今は同人という立場になり、あえてリーダーを務めさせていただきました。
7月の鳥屋待沢についてネットで調べるとヒルの生息域、夏は絶対にいかない!との記載が多く、「あえてその時期に行ってみよう」となんだかそれを楽しんでみえる松本さん。そんな二人で本厚木北口5番バス停から7時50分の宮ケ瀬行のバスに乗車し、8時半に煤ケ谷バス停で下車、そこから入渓の権現橋まで徒歩30分、沢装備の準備をして9時半に入渓した。ネットでは車によるアクセスで8時前後に入渓して9時間程度で入渓地点に戻る記述が多いが、電車バスではこの時間が最速だ。遡行時間が長いと予想した我々は早々に出発した。
この沢は入渓地点(標高180m)から右俣(2級)と左俣(1級上)の分岐まで530m。その手前100m(標高400m付近)までは目立った滝も無く退屈な遡行らしい。
ヒルが半端ない記述が多いためか最近人が入った形跡がなく蜘蛛の巣が多いのが厄介だが、先週梅雨明けし樹林帯から差し込む日差しと沢沿いを吹く風が心地よく、快適な沢登りだ。
そんな快適な遡行も400m付近になると第一の難関だ。沢も段々とゴルジュ帯になり滝つぼの窯も深く、落ちたら泳いでエスケープしなければならないような箇所がでてくる。
ここは腰まで浸かり取り付きステミングから右に乗り移り水流のなかのカバを掴みクリア。
狭いゴルジュ
樋状ステミング
もうすぐ右俣の分岐530mに着きます。
標高530m二俣、右俣出合の滝(10m)
我々は今回左俣なので滝を通過して左俣に進む。時刻は11時50分(入渓後2時間半)というハイスピードで進行中。ここで軽く一本とり、左俣に入ってすぐ左俣の見どころの一枚岩の幕岩。苔がすばらしい。
苔に目をとられながら10分程進むと次の核心10mのスラブ滝。フリーで登る私に松本さんから「高さがあるからロープを出して」と指示。腐ったハーケンが2か所にあり、タイオフで登るようアドバイスを受けリードさせて頂きました(3+)。上部は 2+ でクリア。
ヌルヌルの岩と苔で緊張感あり
スラブ滝を登りきって10分程歩くと600m付近。そろそろどの辺りを詰めて宝尾根に出るかを話し合う。入渓して炎天下を5時間(現在14時)、目標とするバスは16時、疲れがピークになってきた。松本さんの顔が生ビールに、ふくらはぎが手羽先にと幻覚に襲われる。ここはリーダーの特権!直ぐ近く620m付近の顕著な痩せ尾根を這い上がる事に決めた。
三峰山南東の標高820m付近の宝尾根までは両脇が鋭く切れ落ちていて急登だ。目の前の木の根っこを掴んで登ること200m、もしかするとこの詰めが今日一番の核心かもしれない。後半の滝の連続とこの痩せ尾根の詰めで精根尽き果てて820mの宝尾根に出た。ガチャ類と沢靴の解除、ふくらはぎに張り付いてまるまる太ったヒル2匹を取る事にさえ疲れ果てる。さらに宝尾根の小ピーク777mまでは痩せ尾根だ。
宝尾根下降
777m以降のルートファインディングも簡単ではなかったが、尾根は広くなり特にロープを出す危険個所もなく、時間の5分前にバス停に到着。
コロナ感染防止のため混み合う在来線を避け、本厚木駅からはロマンスカーで新宿まで40分。三密を避けて快適に家路につきました。
<所感>
■松本
岩崎元郎著『沢登りの本』の冒頭に出てくる沢として、二十数年来何となくやり残してるなぁ感がずっとあった沢。ついに遡行チャンスが訪れました。2人という人数は、やはりスピーディーかつリズミカルに登れて快適です。ヒル被害に関して私は無し。インターネットやガイドブック等でよく見られる「ヒルの活動時期は避けた方が良いだろう」みたいな情報を、閲覧者が過剰に反応することを逆利用し、見事に三密とは無縁の他の遡行者ゼロ! 真夏の避暑に相応しい沢でした。
因みに、アプローチ途中、林道脇のキャンプ場は家族連れで激混み。三密対策とはいったい何なのだろう?と、またもや悩ましく感じた日でした。
■保岡
この沢の特徴は、後半(400m付近から)に核心部らしい滝が連続して体力を消耗したところに最後の詰めも急登で痩せ尾根。振り返ってみると巻き道もぬかるんで急斜面。こういうところが1級上の沢なのかなと思いました。ネットで言うほどのヒル被害はなく(ふくらはぎの2匹のみ)、他の遡行者と会うこともなく、天候に恵まれた楽しい沢でした
<行程>
入渓9:30~二俣11:40~宝尾根14:00~下山15:30
お疲れさまでした。
文中、ハーケンにタイオフ、といような記載がありますが、根元まで打たれていないハーケンに対し、ハーケンの孔ではなく、突き出た根元にスリングをタイオフ、という意味で発したセリフです。