仙ノ倉山北尾根

  • 期間 2019-04-06~2019-04-07
  • メンバー L田中(35期)、保岡(32期)、小林英(25期)
  • 記録 田中

3/2~3に仙ノ倉山北尾根に挑戦したが、強風のためシッケイノ頭手前で撤退した。
今回も天気予報が悪く危ぶまれたが、結果は大正解。初日の時間を長く取れるよう土樽で車中泊して早朝から行動したことと天気が崩れなかったことが勝因となり、初日に仙ノ倉山頂まで到達し、リベンジマッチを制した。

■4/5(金) 雨
金曜日の喧騒から抜け出し、自宅へ急ぐ。これから東松山経由で土樽まで。関越道で群馬に入ると雨が降り始めた。せめて国境の長いトンネルを抜けると雪であって欲しいと願うが、新潟も雨だった。なるようになれと、コンビニで今晩の寝酒や行動食を買い、土樽駅に1時頃到着。酒やビールはチョイスにこだわらずに買い込んだが、保岡さんのサバみそ缶詰が加わって美味しくいただき、就寝した。

■4/6(土) 晴れなれど風強し
5時に起床、朝食を摂り駅でトイレを済ませてから毛渡橋に車を進めた。前回はここから雪の回廊を歩いてJR上越線、関越高速道を潜ったが、今回は除雪されている。除雪の先端まで車で入ってみたがスペースがないので、平標方面への分岐まで戻って駐車。前回に比べると、ここでも時間短縮できた。
6時50分アプローチ開始。取付きまでつらい平面の道を行く。雪が腐っていて、凍っている箇所があるかと思うと、足首まで、さらに太ももまで潜る踏み抜きがランダムに発生し、脚の筋肉と精神にダメージを与える。8時30分に群大仙ノ倉山荘に到着。IMG_4052

前回は小屋場ノ頭まで最短距離で直登したが、今回は北尾根の稜線の末端からアプローチすることにした。小休止して山荘前の橋を渡っていると、イタチのような小動物が向こう岸を走っていった。オコジョかもしれない。
橋を渡ってバッキガ平を林道(雪の下に道があるように思えた)沿いに左に回り込む。スキー跡につられて少々回り込み過ぎたが、北尾根の末端から稜線に取り付き、木々の根元の赤ペンキでルートに乗ったことを確認する。
間もなく、土樽駅でビバークしていた4人パーティと合流し、共同ラッセルを組んだ。相手のパーティは装備がバラバラでワカン装備が4名中2名、他2名はツボ足だ。男女2名ずつなのだが男性1名(ワカン)のみが強く、一人でラッセルしていた。結局その強い男性と我々3名に単独でカメラを提げた年配男性を加えた5名で交代しながら小屋場ノ頭までラッセルした。IMG_4054

我々は小屋場ノ頭を越えた平坦地で一本取ってアイゼンに履き替え。その間に4人パーティと単独男性が先に出た。
この先はナイフリッジとシッケイノ頭までの急登で、体力的には厳しいが変化に富んで楽しめる箇所だ。ナイフリッジは、前回は雪面が弱かったので稜線にピッケルを刺しキックステップで横歩きして突破したが、今回は先行が稜線にトレースを付けた部分と崩壊して雪面を避けてキックステップ&トラバースする部分とがあった。ナイフリッジ後の急登は頭を空にして黙々と歩を進める。IMG_4059aIMG_4061a

前回テントを張った1530m小ピークを過ぎたあたりで単独男性が引き返し、4人パーティも幕営準備に入った。我々はこの好天の間に最低限シッケイノ頭まで、あわよくばその先のピークまで進みたい。
前回到達点の1627mを過ぎ、シッケイノ頭への斜面までは左に落ちないよう樹木沿いに進む。キックステップの急登が一段落していよいよシッケイノ頭へ出る斜面を登ろうとした時、「ドン!」という音。斜面に亀裂が走ったらしいが、広い雪面を観察しても判らない。不気味なので、樹木が上まで疎(まば)らに続く右手のラインをスピードアップして登ることにした。ここもキックステップや樹木を掴んでの登りがあるかと思うと、雪に隠れた亀裂を踏み抜いて足がぶらぶらするような空洞に嵌まり込んだりする。仲間に引き上げてもらい、恐る恐る進むとシッケイノ頭の突端に出た。この先は広々としてわずかに高くなった箇所がシッケイノ頭だろう。計画ではここで幕営だが、まだ14時を過ぎたところであり、また明日は天候が下り坂の予報なので、行けるところまで行くこととした。
シッケイノ頭から見て、右から上がってきた尾根から繋がる形で美しいピラミッド型のピークがある。すわ!仙ノ倉山かと期待するが、地形図よりも近い印象の上に標高差300mには足りないように見える。IMG_4068

尾根に上がる部分は表面がクラストしており踏むと割れるが、雪が薄く潜り込むほどのことはない。尾根に上がって見上げるピークは下から見たよりも傾斜が急で、風で雪が飛ばされて半分氷化した斜面を逆ハの字とキックステップでよろよろと登る。両足の太ももが悲鳴を上げ、もう限界だと思っても、止まってしまう訳にはいかない。自分はこういう時は歩数を数えて気を紛らわせる。次のピークまで200歩くらいか、また、先を行く仲間たちに置いてけぼりを食わないように頑張ることも支えになる。滑落しないようにピッケルで確保することだけに集中して気が付けば、山頂に続く平坦部の先端に立っていた。シッケイノ頭から見えたのはここだった。あとわずか、あの高まりが山頂だ。「仙ノ倉山頂 2026.3m」の山頂標を前に自然と握手が出る。風が強く、目出帽の口の部分が凍ってしまう。IMG_4077a

早々に山頂を辞して2021m手前の鞍部に下り、稜線に遮られて多少風が弱まる風下(南)側にスコップでL字を切ってテント場とした。テント前は緩やかとはいえ凍った雪の斜面なので、手ぶらで、特にテントシューズで歩くのは危ない。テント入口からトイレまで短い道を掘って安全を確保する。20190406_y17

テントに入ると風の音は激しいがお茶とおちゃけでいつもながらの天国となった。何を飲んでも食べても美味しい無敵状態になり、4時起き6時出発と決めて就寝した。

■4/7(日) 晴れときどき曇り
4時起床。まだ風が強い中、テント撤収にはF1ピットクルー並みの滑らかなチームワークで熟練の技を発揮した。
5時50分出発。-4℃、雲は多いが切れ目から太陽が覗く。昨日、4名パーティの前に出てからは仙ノ倉山頂まで踏み跡がなかったが、山頂からこちらには平標方面からの往復らしいトレースが付いている。今日は平標山まで緩い上下降があるものの、その後は下り一方だ。すでに里心がついており、昨日行程を稼いだ分早く下りて10時20分のバスに乗りたい。
稜線上の道は日当たりが良いためか木道や笹が露出している箇所が多い。ところどころで「東芝ランプ」の赤い道標が谷川岳肩ノ小屋までの距離を示しているのは、かつて小屋で同社製品を使っていたのだろうか。しかし、仙ノ倉と平標の中間地点で「10500m」の表示は、見るとメゲてしまいそうな数字だ。平標の登り口に祀られていた「大山祇(オオヤマツミ)」の石碑に今後も変わらぬ無事を祈って平標山頂を通過。山頂標と並んで三角点標石も出ていた。松手山へのルートに入り、1677m地点を過ぎると風も止んだので、ヤッケを脱ぐ。
松手山から踏み跡を辿ると1411mから尾根を外して東へと下り、別荘地の間の舗装路に出た。10時にバス停に到着し、越後湯沢駅へ。さらにバスで土樽へ。ところがバス終点の「土樽」は「土樽駅」ではなく集落開発センター前だったので、毛渡橋までの1kmほどを歩いて車を回収した。

<行程>
4/6 平標新道分岐6:50~群大仙ノ倉山荘8:30-8:40~小屋場ノ頭10:40-11:00~シッケイノ頭14:20~仙ノ倉山16:00~2021m手前鞍部16:10
4/7 2021m手前鞍部5:50~平標山6:40-6:50~松手山8:10-平標山登山口10:00

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