妙義山・相馬岳北稜

  • 期間 2018-11-03
  • メンバー L宇田川(34期)、松本(17期)、小林功(32期)、田中(35期)
  • 記録 田中

相馬岳北稜は西側の妙義湖と並行して続く稜線で裏妙義の対面にあたる。尾根歩きあり、岩登りあり、ルートファインディングあり、かつ首都圏からアクセスしやすいバリエーションルートである。11月3日は晴天の特異日らしく、週末悪天候続きの最近には珍しく良いお天気だった。我々のパーティはつつがなく行動して予定より早めに下山できた。

11/2深夜、宇田川さんにメンバーをピックアップしてもらい、関越道を北上、上信越道松井田妙義ICから一般道で妙義湖の畔へ。一旦中木ダムまで行ってから取付きを探す。ダムから2本目の沢を越えた突端の尾根から取り付けそうだ。手前のスペースに駐車して出発。10分くらいで「あたご社」の標識がある。
062145あたご社

30分くらいで稜線に出た。P1らしき岩が見えるが定かではない。
064713P1
  P1
P6までは全く確信がなく、岩と岩のギャップがどこも底の見えないほど深い。コルへは懸垂でしか行けない箇所があり、また登り返しもフリーでは危険なこともあり、ここがP6とP7のコルであろうとめぼしを付ける。
084156P6懸垂点
  懸垂点
今回は4人パーティなので30mダイナミックロープ2本の装備にした。易しい箇所はFIXして二番手三番手はプルージック(または各種アッセンダー)で。難度の高いところは中間に結び目(インラインエイトノット)を作り一人ずつビレイをする、いわゆるロープウェイ方式とした。
091745P7
  P7
P7はルートが岩陰になり長さが測れないので、とりあえずロープを2本引っ張っていき様子見だ。結局30mでは足りず、2ピッチの登攀となった。
岩壁は溶岩質で石が固まった感じで、ガッチリしていると思っても触るとポロッと外れる脆い石が混ざっており、一見ではわからない。油断できないので踏むときも掴むときも用心しないといけない。また、岩壁の途中に木と土のエリアがあり、ずるずる滑って始末に悪い。P7はそんなルートで時間がかかってしまった。
P7以降は稜線の歩きで、ブッシュあり、やせ尾根ありで1時間ほど楽しませてくれる。P11で稜線行が行き詰まってしまい、東側をトラバースする。これが悪いトラバースでロープをFIXしてコルに立った。
112457P12
  P12
P12(つづみ岩)は西を大きく巻くこともできるがここは直登にした。途中に厳しい箇所があり、ロープウェイ方式で二番手三番手を上げた。20mくらいの壁で、前半は草付き、その後外傾した大岩の乗越が核心であり、古いスリングと新しい鎖がぶら下がっていた。大岩を越えればすぐにP12のピークだ。P12の山頂は北に延びており、この脆く痩せた尾根の下降も侮れない。ピークから距離にして70mほどか、行き詰まってあたりを見渡すと東側の立木に懸垂用の残置スリングが1本だけ掛かっていた。そこを下降点とするが、心許ないので1本付け足した。懸垂10mくらいで傾斜が緩むのでここを南にトラバースしていくのがルートであったが、我々はもう一段降りてしまい、登り返すこととなった。
このトラバースはカニのハサミを巻くもので手前に仙人窟が突然出てくる。東側から穴をくぐると岩壁に大きなくぼみができており、風穴の方ではなく、こちらが本当の仙人窟であろう。
131429仙人窟
  仙人窟 偽物と本物
仙人窟からは一般道に近く、わかりやすくはあるが沢登りの詰めのような急登になり、1時間半で相馬岳山頂に到達。4人の登山者が頂上にいた。
143129山頂

下山に利用した相馬岳コースは鎖場や岩尾根の登り返しが多く、暗くなると危険なため、明るいうちの通過が無難だろう。
152851のぞき穴
  のぞき穴

<覚書>
①取付きとなる北稜末端の車道カーブからP5までは歩き。
②P5の先はスッパリ切れ落ちているため、20mほど戻って西側に折れ、左に向きを変えながらP5~6のコルへクライムダウン。急なため必要なら懸垂下降。
③P6の岩溝状の登り約8m(3級)でP6の肩に達する。易しいがロープを出した方が無難だろう。
④P6の肩より裏のランペを登る(肩よりP6の直登カンテラインは登れる気がしない)。
⑤P6~7のコルへは要懸垂下降。
⑥P7の取付きは懸垂着地点より左に10m移動した立木。登攀を1ピッチで済ませたい場合は40m以上のロープが必要(出だし立木を利用して3級、途中2級、上部再び3級)。途中でピッチを切る場合でも立木(完全に当てにできるほど丈夫ではない)まで30mはある。ランナウトに慣れておく必要があるだろう。
⑦P7~P11は歩き。
⑧P11のピーク直前で左にトラバース。トラバースはロープ使用が賢明。5mほど登り返してP11とP12のコルに着く。
⑨P12(つづみ岩)はブッシュ交じりの痩せたカンテラインで一見登れなさそうに見えるがルートである(約20m。1ムーヴだが、A0:4級、フリー:5級?)。上部の外傾した岩の立ち込みは通常A0となり、フリーで越えるには技術を要する。ただし、P12を登らずにコルを乗越して懸垂下降、トラバースで西側から仙人窟へ巻き上がるルートもあるようだ。
⑩P12は狭いピーク。その先の痩せ尾根下降は両側が絶壁で見晴らしよく高度感がある。足場が脆いので緊張を強いられる。
⑪P12よりクライムダウンを交え70mほどで尾根が途切れるので、東側の立木を利用して約10m懸垂下降。
⑫見分けの付きにくいバンドらしきラインを南へトラバースしてゆくと再び尾根と合流する。
⑬尾根は高度感を失い、仙人窟のあるブリッジへ着く(ブリッジの手前をクライムダウンしてもよいし、渡った先をクライムダウンしてもよいだろう)。
⑭仙人窟より先は、ロープの使用箇所はない。
《登攀箇所の難易度順に(P12>P7>P6)》

<メンバー所感>
■宇田川
30mロープの場合、P7では早めにピッチを切る方が良いようだ。自分は1ピッチで抜けられるのではと一杯まで伸ばして足場の良くない所でビレイすることとなり、余計な時間が掛かってしまった。
P12は大岩部分が核心ではあるが岩を抜けて直ぐの草付きが悪く、草付き部分に垂れている鎖を使わせてもらった。
ロープについては、P7が2ピッチになってしまうものの、荷物を分散できることや取り回しを考えると、30m×2の選択は良かったように思える。
ロングルートで登りごたえがあり、達成感のある山行になった。
■松本
皆さんお疲れさまでした。宇田川君はリードにも安定感が増してきたと思います。
■小林功
低山でありながら短時間で岩稜帯、細尾根、あらゆるバリエーションが味わえる妙義山・相馬岳北陵は危険と昴揚感を存分に味わえ、また山が好きになる山行となった。一緒に登ったパーティーに感謝。
■田中
良いルートだった。妙義らしくコンパクトな中に登山の要素が詰め込まれており、一定の技術と体力の準備が出来てからチャレンジすると習得した技術を実践で定着できる有効なルートだと思った。

<行程>
北稜取付6:10~稜線P1 6:47~稜線P5 8:01~懸垂P6 8:22~登攀P7 9:00-10:18~登攀P12 11:24~仙人窟13:07~相馬岳14:31~のぞき穴15:28~林道16:00~北稜取付17:00

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