鹿島槍ヶ岳東尾根

  • 期間 2017-05-04~2017-05-06
  • メンバー L小林功(32期)、保岡(32期)、宇田川(34期)、田中(35期)
  • 記録 田中

残雪期縦走プランで鹿島槍ヶ岳を東尾根から登頂した。
2日目までは好天で下山の3日目は雨だった。標高が高いところは雪が締まっていて歩きやすかったが、低いところ、特に下山時は踏み抜いたり足場が崩れたりで歩きづらかった。岩峰より雪稜の登攀のほうが大変で、急斜面に加えて重荷の縦走が困難であった。軽量化のため、ギアの共有化、食料の吟味、シュラフなしでやれないかなどが次回の課題である。
ともあれ、予定通りの行動に怪我なく縦走できたことを山塾の諸先輩方に感謝したい。

■5/4(木)
大谷原駐車場では2組のパーティが準備していた。先発は男性2名、女性4名の6人組。我々より後発はベテラン風男性の3人組。この2パーティとは3日目のテン場まで行動を共にした。

本日の核心は「東尾根への取付であった」といっても過言ではない。1時間弱の短い時間であったが重荷になじんでいない体に急登は厳しい。
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取付からは等高線も緩み、雪も付き始め、快適な尾根登りで一ノ沢の頭、二ノ沢の頭に到着。「6人組」は第一岩峰取付まで行き、明朝は6時出発予定とのことだった。先に行ってくれることは翌日の渋滞緩和的にありがたいと、この時は思った。3人組の後に宇井さん夫妻が到着。奇遇を喜んだ一同はピーカンの2,200m付近で2日分のアルコールを消費してしまった。
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■5/5(金)
明朝は「6人組」が岩峰を通過してからと考え、6時出発とした。これが大間違いであった。逆に4時に早出して「6人組」の前に出るべきだった。

宇井夫妻と3人組を見送り、予定通りに6時過ぎに出発、第一岩峰への雪稜の登攀を始めた。
トラバースも登攀も長大な急斜面で心身ともにすり減る。ただ、近くで見ると二ノ沢の頭から見上げた斜面より怖さは少なく、トレースもはっきりしていたので無心で登った。

第一岩峰取付では宇井夫妻が登攀中で3人組が待機していた。30分くらいの待ち時間で我々も取り付いた。
雪岩ミックスの緩いスラブだったので1PはFIXロープにした。うださん(宇田川)がリード、田中がビレイ。
保岡さんと(小林)功さんがプルージックで続き、そのまま第二岩峰取付へ行ってもらった。田中は2組先行していて時間があったのでつるべで2P目を登り、ロープいっぱいで岩角にセルフを取り、肩がらみでうださんをビレイした。
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第一岩峰上部から第二岩峰取付まで厳しい雪稜登攀があり、息も絶え絶えで第二岩峰に近づくと、なんと6時に出たはずの「6人組」がまだ取り付いていた。10時なのに。待機中の宇井夫妻とベテラン3人組と再会できたのだが喜ばしいことではない。この後、2時間30分の待機でよかったのは後から追いついてきた日帰り予定の大阪2人組と仲良くなったことだけだった。

「6人組」が通過した後、宇井夫妻、ベテラン3人組が難なく通過し、順番が来た。
保岡さんがリードして功さんがフォロー、うださんがリードで田中がフォロー。他のグループのクライミングを見ていたのでそれに倣って1段登ったところでビレイし、1ピッチで岩頭まで到達するプランで挑んだ。
ランナーは残置ハーケンで4箇所。岩頭では錆びたリングとピナクルで確保した。チョックストーンは左足に明瞭なくぼみが2箇所あり、それを頼りに右足を上げて4名とも難なくクリアした。
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第二岩峰を越えたところから北峰まではナイフリッジの稜線歩きや急斜面のトラバースで、重荷と相まって気力と体力が削がれた。その分、北峰登頂時の喜びはひとしおで、メンバーでがっちりと握手を交わした。
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北峰登頂がピークでその後の南峰から冷池小屋までは気力だけで歩いた。南面は雪が解けて夏道が露出していたため、アイゼンを外した。
翌日は6時から雨とのヤマテン予報だったので、2時起き4時出発とし、早寝した。
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■5/6(土)
予定通り4時に出発し、西沢の誘惑に誘われながらも安全第一で赤岩尾根へ。日の出を見ながら雨が降るのか疑問視していると予報通りに6時より降雨があった。降ったり止んだりしながらいつしか本降りになっていった。標高が下がるとともに踏み抜きの回数が増え慎重に下る。尾根終盤はなかなかの急傾斜、雨もあり非常に歩きにくく苦労する。 ずぶ濡れになりながら5時間ほどで駐車場までたどりついた。
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<小林功所感>
今期最後の雪山に設定した鹿島槍東尾根は期待通りハードルの高いルートだった。雪稜、登攀、重荷を背負っての縦走は厳しかった。しかし、雪訓から始まり、今期登った雪山での経験が生かせる集大成的な山行になった。
来期の雪山に向け一緒に行ったメンバーと無雪期のルートでレベルアップを図り、来期の雪山も今期以上に計画的に楽しみたい。
今回も田中さん、宇田さん、保岡さんありがとう。

<保岡所感>
鹿島槍東尾根とパソコンで検索すると、殆んどは記述も写真も第一岩峰と第二岩峰が核心とされている。が、私の個人的所感では第二岩峰を登ってから北峰までの一時間強のナイフリッジのトラバースが一番の核心だと痛感した。なぜなら、標高2600mで雪質は安定しているものの、二ノ沢の頭を出発して5時間、自分を確保してるのはピッケルのみ。そこに20キロ近くの重荷...この足を踏み外したらやられる!という状況下で精神的にも体力的にもやられました。個人的には初日は二ノ沢の頭ではなく、もう80分頑張って第一岩峰手前でテント設営しておけばと痛感しました。
三日目の赤岩尾根では冷池小屋のオーナーの言葉が頭をよぎりました。【赤岩尾根を下る時は1500mから下は勾配が急になるし雪も不安定になるから、下に行くほど注意しなさい!】 案の定、各自シリセードで谷方面に落ちそうになったり、雪を踏み抜いて靭帯を痛めたり、木の根に脚をひっかけて滑落しそうになったりと、下に行けばいくほど緊張感を持続できる精神力と体力が必要だと痛感いたしました。

<宇田川所感>
登攀具を持っての縦走は思っていた通りに過酷ではあったが、天候に恵まれた事もあり春の雪山を満喫することができた。天候と同行メンバーに感謝。
春山の緩んだ雪は冬山のそれとは違った難しさがあり、切れた稜線ではこれより緩んでいたらアンザイレンしたいなと思う箇所もあった。また登り下りでも柔らかい雪に難儀した。
春の雪山は初めてだったので、これから少しずつでも経験を積んで行けたらと思う。

<田中所感>
南峰から冷池小屋のテント場に到着したときは、体力気力が消耗しており、ビールを買いに行く前に整地してテント設営を促す仲間に切れてしまった。ビール飲みたい! また、翌日、赤岩尾根の下降に際しても足場が崩れることや踏み抜くことに嫌気がさして集中力が切れた。どちらも精神が弱い証。さらなる修行が必要です。
それはそれとして、功さん、往復の運転に感謝します。うださん、力強いリードに感謝します。保岡さん、最後まで笑わせてもらい感謝します。また、ご一緒しましょう。

<行程>
5/4 大谷原林道ゲート6:50~東尾根取付7:10~東尾根稜線(1335m)7:50~一ノ沢の頭10:40~二ノ沢の頭12:00(幕営)
5/5 二ノ沢の頭6:13~第一岩峰取付7:30-8:00~第二岩峰取付10:20-12:30~第二岩峰ピーク13:10~北峰14:17~南峰15:20~冷池小屋17:00(幕営)
5/6 冷池小屋4:10~白樺平5:00~高千穂平6:00~砂防ダム8:30~大谷原駐車場9:00

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