冬期登攀プランで赤岳に主稜から登頂した。終日好天で最高のコンディションであった。そのため、取り付くパーティも多く、渋滞が生じた。鈴木-宇田川組は遅いパーティを追い越して順調に登攀した。反面、小林-田中組は自分たちがいっぱいいっぱいで鈴木-宇田川組に2時間の遅れをとってしまった。
小林、宇田川、田中の3名は冬期雪稜初登攀であり、無事に怪我なく生還できたことはめでたいことと思う。
【小林-田中組】
○1P(40m)(リード田中)
チョックストーン下に0ピン、ステミングで足を上げてバイルを打ち込む。CSの上にランナー1、雪稜を上り、ピナクルにランナー2、ルンゼを右上ランナウトし、いやなトラバースからテラスの残置ロープにビレイ。
○2P(50m)(リード小林)
いったんビレイ点から手前に戻り、ビレイヤーを右下に見ながら東面のコーナーを直登。数段上げれば行く先の見通しが利くくらいの高さ。登りきったところのピナクルにランナー1。岩壁を乗り越えると急斜面の岩稜帯があり、雪稜の手前の岩のボルトでビレイ。
○3P(30m)(リード田中)
2Pからすぐ先の岩壁手前でボルトにビレイ。
○4P(40m)(リード小林)
岩壁は一登りで終わりで、急斜面の雪稜を長く登り、途中の岩のボルトにビレイ。
○5P(40m)(リード田中)
見通しが利く雪稜をコルに向かってダブルアックスで登る。ふくらはぎがプルプル、フェイスマスクで口を覆っているので息が切れ、限界近くで上部岩峰の取付き点で残置ロープにビレイ。
○6P(20m)(リード小林)
厳しめの取付を手足を確認しながら乗っ越すとすぐに残置ハーケンにビレイ。
○7P(40m)(リード田中)
明らかに核心部。左のチムニーにはまり込んでしまい、ランナーも取れない。徐々にかぶってきたので生命の危機を感じた。子供の小さいころを思い出し、走馬燈が回る前になんとか根性で死地を脱した。(小林)功さんが言うにはなんと右側に階段があったとのこと。
小垂壁を越えて岩稜の右斜面を登り、凹角の垂壁にぶち当たった。見た目よりホールドが豊富なので気持ちよく乗り越え、ふくらはぎの限界に挑戦しつつ岩稜帯手前の岩のボルトにビレイ。
○8P(40m)(リード小林)
岩稜を超え、谷のような深いルンゼを登り、岩の門のような地点のピナクルにビレイ。
○9P(40m)(リード田中)
岩の門からルンゼの回廊をダブルアックスでよじ登り、ふくらはぎはもう最終段階。ビレイ点ははかない岩角。
○10P(30m)(コンテ)
9Pビレイ点から一般道への稜線が見えるし、宇田(川)さんも見えた。立って歩ける雪稜を最後の力を振り絞って登り、登頂を果たした。
【鈴木-宇田川組】
1~3ピッチまでは小林-田中組と同行。3ピッチ終了点にて先行グループを抜き、小林-田中組との間に1組挟む形となった。
1ピッチ目宇田川がリードし以後つるべで進む。上部岩稜取付きまで4ピッチ、登山道手前傾斜の安定した雪稜地帯まで4ピッチの計8ピッチで登った。
全体的にロープを一杯まで出しながら登る箇所が多かった様だが、岩稜帯ではビレイ点にアンカーボルトが整備されている場所も多く、ピッチを切る目安となった。
<小林所感>
雪稜登攀の経験が少ない自分、主稜へのトライはチャレンジ的な山行であった。ロープワークが苦手という自分がいたが、持っているスキルをフル回転させて登ることができ一皮剥けた気がした。今回のような山行は不安もあるが自分のスキルアップを実感でき次に繋げることができるので、今後もトライしていきたいと思った。二年越しの計画をクリアーさせてくれた(鈴木)百合子さん、田中さん、宇田さん、ありがとうございます。
<宇田川所感>
天気に恵まれた事もあり、緊張しながらも楽しむ事ができた。恵まれた天候であっても停滞していると寒さを感じ、冬季登攀の難しさを少しだけであるが体感できた。
<田中所感>
毎回、自分の驕りに反省しきり。現実の厳しさに身も心も引き締まります。手足が痛いくらいに冷たく、思うように動けない状況で登攀やロープワークを行うことの難しさを実地体験しました。風の弱い好条件下だったのが幸運でした。
途中、特に核心部で心が折れそうになるところをなんとか立て直せたのはパートナーの功さんのおかげです。ありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。
<行程>
行者小屋テント5:50~文三郎道取付き点7:00
【小林-田中組】
~1P(CS)8:20~5P(下部岩峰最上部)11:00~8P(上部岩峰最後)13:30~終了点14:30
【鈴木-宇田川組】
~山頂12:30