昨日の相馬岳北稜から引き続き。
テントを畳み不要物をデポして広河原駐車場を出る。土方は足が少し痛いがとりあえず歩くのは大丈夫とのこと。今日は遅くなると天気が崩れる予報なので、無理のない範囲で行くことにする。
国民宿舎の外トイレを使い、水を汲んで出発。晴れ、9℃。
丁須の頭方面の登山道に入ると間もなく黄色ペンキで「←巡視道」と書かれた木があり、そこから取り付く。
道は荒れておりイバラに引っ掛かっていたら、その手前に左(南)の沢に下りる踏み跡があった。沢にあまり水はなく濡れる心配はない。標高500mを超えたあたりで左手の尾根に取り付く。急傾斜を登りながら「ドゥルル・・・」というような音を聞いたが、獣かあるいは遠くの作業音か判然としない。尾根に乗ると眼下は植林地。と、ここでまた「ドゥルル・・・」が断続、どうやら獣らしいが姿は見えない。
植林の作業道らしきスペースを抜けて西へ向かう。木の根を掴むような急傾斜を登り、尾根がいったん南に屈曲すると標高780mで鶴峯山東側の岩壁の基部に突き当たる。
踏み跡とマーキングに従って右(北)へ行くと、涸れた谷で岩壁の切れる箇所に出た。切れ目に入って落ち葉の斜面を上がり、右側の溝に足場を探して身体を持ち上げると手掛かりもあって登れた。
上がったコルで方角を確認し、普通に歩いて高度を稼ぐとまた岩。右に赤テープがあるが、岩に付いたテラスに上がる足場が心細い。踏み跡の見えた左の藪斜面をトラバースすると下部が泥、上部が岩の急斜面になっていた。泥部分を上がり、太い枯れ木に確保を取って土方が先に登る。岩には手掛かりがなく左に逃げたが、足元の泥が崩れる上に掴もうと思う木に枯れ腐れているのが多くて悪かった。先ほどの岩を右に回った方がよかったかもしれない。
這い上がった先のピークは木に囲まれていて特に目印もない。尾根を南に少し進んだ箇所の方が高く見えたので、そちらが鶴峯山山頂(899m)と思って休憩。景色もよく国民宿舎が小さく見える。
鶴峯山の山頂にて。ベストキッドに倣って鶴のポーズ。
風穴尾根は鶴峯山からほぼ一直線に西北西へ伸びる。しかし、休憩を終えて尾根に沿って行くと転げ落ちそうな急斜面。戻ってみると手前のピークの先に尾根が続いていた。地味な方が本当の山頂だったか。
急傾斜をコルに下り、眼前の急登を上がるとナイフリッジ。尾根はそのまま岩峰(P1)に突き当たっている。確保を取ってナイフリッジを通過、P1を回り込んで懸垂下降。次の岩峰は巻く。
P4を登って烏帽子岩を眺める。
そうこうして行くと、尾根の右側を下りたところから木の間越しに尾根の向こうの景色が見える。風穴は予想以上に大きく、心地よい秋風が吹き抜けていた。穴というより尾根の窪みに立派な岩橋が架かっているようだ。
風穴を潜り、岩壁の左(南)側沿いに下りる。足元は崩れて滑りやすい石から泥に変わるが踏み跡が見えない。進んでいくと支尾根にぶつかった。そのまま支尾根を横切って岩峰を巻くルートもあるようだ。ここは支尾根を上がっていくと岩峰の間(P7とP8)の狭いコルに出た。コルを抜けて左側の踏み跡を登るとホールドスタンスの乏しい一枚岩の壁になるが、踏み跡はその手前を上へ向かっていた。
P7、P8のコルから上がったところ。奥の岩峰はP9
少し上がって確保を取り、土方先行。高度感満点のナイフリッジの先の木でピッチを切る。そこから次の岩峰(P9)へ向かっては半分トラバースの懸垂下降で小林が先行。フリクションの利く岩だが、途中まではスタンスが不明瞭で緊張する。
P9の基部からは左右どちらにも懸垂下降できそうだが、下の歩きやすそうな右(北)に決定、ロープ一杯下りる。落ち葉を踏んで尾根に戻ればP9は背後、危険地帯は終了だ。
ハーネスを外し、風穴尾根の頭を目指して尾根を辿る。小林が先に立って小ピークを越えたところで「グルル」と聞こえたかと思うと、下の平坦部を黒い影が右から左に走り抜けた! 一瞬のことではっきりしない(それほど速いのだ)が大小3頭ほどに思える。親子連れのクマだろう。後ろを歩いていた土方は残念ながら見なかったそうだ。そこまで下りてみるとドングリの散らばる地面に足跡が残っていた。そうしてみると朝の「ドゥルル」もクマだったか。その後も風もないのに藪がガサガサしたりするので近くにいたのかもしれない。
最後に結構急な尾根をひたすら登って風穴尾根の頭(1050m)に到着し、無事に風穴尾根を完遂。休憩の後は歩きやすい道を一気に下り、ちょうど国民宿舎に戻ったところでポツポツと降ってきた。
風穴尾根の頭にて
<行程>
国民宿舎 5:00 ~ 鶴峯山西側の岩壁基部 7:15 ~ 鶴峯山 8:45 ~ 風穴 11:40 ~ P9通過 13:50 ~ 風穴尾根の頭 14:30 ~ 国民宿舎 15:40