爺ヶ岳白沢天狗尾根~鹿島槍ヶ岳

  • 期間 2012-05-03~2012-05-05
  • メンバー L松井(26期)、浦野(27期)、二見(27期)
  • 記録 松井

●5/2(水)
16:30 新宿発の高速バスで浦野さんと松井は信濃大町へ(¥4100)。
出発時、東京はかなりの雨だったが西に向かうにつれて小降りとなり、21時過ぎ信濃大町駅に着いた時は止んでいた。
駅前の竹ノ屋に宿泊(素泊まり¥4200)。二見さんは22:30発のバスに乗車。

●3(木)
激しい雨音で目が覚める。
5:00に二見さんが到着次第出発予定で予約していたタクシーをキャンセル、旅館に合流し様子を見る。
6時を過ぎ雨足が弱くなったところで駅前からタクシーに乗り20分で爺ヶ岳スキー場に着く(¥3700)。

7:05 スキー場(950m)のリフトに沿って終点まで約150m上ったところから登山道に入る。
雨は降り続いているが近年整備されたと思われる道は比較的歩き易い。
途中イワウチワがたくさん咲いている急坂を越えブナ尾根と合流(1412m)する手前あたりから積雪が見られるようになる。
「ブナコブ平」「栂の塔渡」といった標識のある雪面はだんだん斜度を増し、度々膝上まではまり込んでしまうようになる。


11:40 
白沢天狗山北峰直下の天狗の肩(1950m)では垂直の雪壁に足がかりが作れず北側にトラバースしようとするが、雪面の下に大きく空洞があり進めない。
再度、直登にトライした浦野さんがステップをどうにか刻む。
40分以上を費して肩を通過するとヤブ漕ぎとなる。方向を確かめながらアップダウンをくり返し進むと東側が開けたガレ場に出た。
斜め縦方向に割けるように積み重なる露岩を登るが最後の1m程の段差が、岩が脆くて乗越すことができないため空身で登り、ザックはロープで引き上げる。

13時半過ぎ
平坦な雪面が続く稜線に出、小天狗(2063m)からの尾根にのったと判断する。
東尾根とのJP近くまで進む予定だったが、かなり疲労しているので幕営地を探しつつ進み14時半2050mの地点(1994m鞍部の手前)で今日の行程は終了とする。

15時半、設営を終えテントに入る。雨は止み風もあまり無く、気温もテント内で10℃を越えてガスを炊くと暑いくらい。
ケータイのアンテナは3本たっておりコア隊に現況報告を入れると予定通り東尾根上で幕営しているとの返信がある。
今回の夕食は両日とも浦野さんのペミカンで今日はカレー。残りのペミカンは外の雪中に保管する。
ラジオの予報ではこれから低気圧が通過するため、降雨や降雪があるとのこと。
明日の行程の厳しさを考え早めに夕食を済ませ19時半頃シュラフに入る。深夜、激しい雨や風の音で何度も目が覚める。

●4(金)

3:00起床、各自で朝食後テントを撤収し4:45出発。
雨は止み雲も一部は切れていて青空が覗き、寒さは感じない。しばらくは緩やかな稜線を行く。

2205mからの稜線上北東側は谷沢に向かって雪面が崩れかけているため西側のヤブに入ると背丈を越えるハイマツ帯で非常に消耗させられる。
ほとんど木の枝を伝うように進むが1時間で100m上がるのがやっと。途中あまりに時間をとられるので稜線に戻り比較的安定していると思われる雪面を進もうとした松井が空洞にはまる。
ザックがひっかかった状態で止まったが足が宙に浮いていて慌てる。
2人にザックと体を支えてもらいなんとか抜け出し再びハイマツ帯を行く。
2時間程のヤブ漕ぎで2411mのJP標識地点に出る。
上空は青空が拡がっているが雲が激しく流れており、東尾根は途中まで見えているがその先は一面の雲の下。コア隊の姿は見えない。

10:00 
頂上直下の雪壁を息を切らしつつ登り10:45爺ヶ岳中央峰に到達。途端に冷たい強風にさらされる。ガスの中で視界はない。

一般登山道は昨年より雪が少ないという印象。
爺ヶ岳北峰は捲き、時々小雨がぱらつく中を約1時間半で冷池山荘に着く。疲労困憊していたがすぐに整地しテントを設営、中に入る。
水を作りつつ山荘で買い求めたビールで、とりあえず乾杯。
ヤブとの格闘で肩や腰が痛むが、課題の半分を達成したことで気分は晴れやか、話がはずむ。

16:00を過ぎ夕飯のシチューを作り始めていると、突然テントの外から「浦野く~ん」と金澤さんの声がする。
コア隊が到着したのだ。天候が悪化していることや、時間的なことを考え「もう途中で幕営しているのだろう」と話していたのでびっくり。
こうしてテント場で仲間と会えると本当に嬉しい。外に出てみると到着時に4、5張りだったテントは10張り以上増えテント場はギッシリ埋まっている。

明朝は低気圧が去って鹿島槍からの展望が望めることを期待するが、気温がどんどん下がって雨はみぞれに変わりテントが風にはためく音も大きくなってくる。19時半過ぎシュラフに入る。

●5(土)

3:45 起床、5:00 あたり一面のガスの中をアイゼンをつけて出発。
アイゼンはよくきくが、小雪まじりの強風でメガネが曇り足元がよく見えない。風にあおられ何度もバランスを崩しそうになりながら2時間で鹿島槍南峰に着く。視界はゼロ。

雪は止んだが、じっと立っているのが難しい程の風で、そそくさと下山。下るにつれ雲が晴れ北アルプスの連なりが姿を現し始める。
布引山を過ぎたところで登ってきたコア隊とすれ違い、約1時間半でテントに帰着。一息入れ、テントを撤収。
布引山から引き返してきたコア隊と記念撮影をした後、9:50下山開始。

テント場を出発して1時間半、爺ヶ岳北峰手前で、前方から歩いてきたグループにすぐ先に遭難者がいることを教えられ驚く。
昨日の天候悪化で山荘にたどり着けず遭難したらしいとのこと。
恐る恐る歩いていくと、北峰と中央峰の鞍部の登山道に女性がうつ伏せで横たわっており、警察の方(或いは山小屋の方か?)が立っていて、登山道をはずれて歩くように指示される。
その色鮮やかな雨具や登山靴などのあまりの生々しさに足早に通りすぎるが、直後ヘリコプターの音で振り返ると、強風のためか何度もホバリングをやり直した後、救助隊(?)の人が一人下降し、やがて遺体を収容していった。

気を取り直して南峰へ登っていくとこちらに向かって手を振っている人がいる。
近づいていくと扇沢から登ってきた飯干隊のメンバーだ。握手を交わし写真を撮った後、山荘まで行くか思案中という彼らと別れ南尾根の下りにかかる。

相変わらず風は強いがすっかり晴れ上がり、登ってきた白沢天狗尾根や、扇沢の駅、その向こうの針ノ木雪渓がきれいに見えて気持ちの良い下りだ。が、体力的にはもう限界に近い。


柏原新道とのJPからの下りは昨年以上に雪がグズグズにくさっており、何度もシリモチをついて消耗し足が止まりがちになった松井を心配して、浦野さんと二見さんが荷物を分担して持ってくれる。
が、すぐに2人に置いていかれる。情けないが、もう余力がない。長い長い樹林帯をひたすら下り15時半やっと登山口に着く。

タクシーを呼び薬師の湯で汗を流し、松本発18:35のあずさに乗車。
満席でデッキに座っていたが駅に停車する度に混雑は増しラッシュ時の通勤電車なみ。疲れきって立ったままウトウトしながら東京へ。

<まとめ>
今回の山行は今年の1月の天狗西尾根での強風体験や2月の会津駒講習でのラッセル、そして3月の仙ノ倉自主や大源太自主での悪い雪面でのルート取りや地図を確認することの重要性など、経験し積み重ねたことが全部活かされたように思う。
また、同時期に同じ地域で大きな遭難事故が相次いだということを後で知り、少しの油断や判断ミスが取り返しのつかない事態をひきおこすということを改めて考えさせられた。
個人的には体力不足は否めず、最終日メンバーに迷惑をかけてしまい申し訳ありません。

<行程>
3(木) 爺ヶ岳スキー場登山口(7:05)~白沢天狗尾根稜線2050m(14:35)
4(金) C1(4:45)~JP(8:36)~爺ヶ岳中央峰(10:45)~冷池山荘(12:15)
5(土) 冷池山荘(5:00)~鹿島槍ヶ岳南峰(7:05)~冷池山荘(8:37/9:45)~爺ヶ岳南峰(11:50/12:00)~扇沢登山口(15:30)

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