剱岳・源次郎尾根

  • 期間 2024-08-02~2024-08-04
  • メンバー L秋永(42期)、中村(42期)、橋本(44期)
  • 記録 秋永

源次郎の夏。
昨年真っ先に企画提案して、諸々の理由で成立しなかったもの。当時はまだ先輩に連れていってもらうことしか考えられなかった。今年は早くからこの3人が夏合宿の参加を決めており、企画段階から大先輩たちにいろいろ相談をした。本番では経験者無しのパーティで無事に登頂し帰ってくることができ、達成感が本当に大きい。

中村さんは剱岳こそ初めてであったが既に百名山を九十座近く登り、日頃の山行からも感じる通り桁違いの体力や対応力がある。橋本さんと私はそれぞれ個人山行で別山尾根ピストンを経験していることから、下山路に関しては既知だ。また、橋本さんは山岳看護師を目指す外部研修などに、私は本年JMSCAの無雪期・積雪期のレスキュー講習に参加。初見のアルパインルートだとしても、この3人ならできる気がする、何かの際にはお互い考えて判断できるだろう、という静かなる確信があった。
当日はピーカンの晴天・高気温でバテ気味になりながら15時間以上の行動となったが、3人の気力と体力、これまで学んできた技術があったからこそ、それらを高め合うことができたと思う。
地道な訓練や主体性を尊重した自主山行企画など、山塾らしさを存分に味わってくれば、仮に経験が浅くともこうした挑戦も叶うのだと実感した。逆にいうと、それらを疎かにし憧ればかり目指すようであれば、いつかどこかで成長や成功を妨げるだろう。
以下、写真と共に振り返る。

■8/2(金)
みくりが池
真っ青なみくりが池。初日、深夜バス入りした中村さんは浄土~龍王~立山三山を縦走し先にテン場へ。私は橋本さんと10:30スタートで室堂から別山乗越経由で劔沢キャンプ場に向かった。室堂からは遠く毛勝三山まで望むことができ、5月の合宿(⇒ 5/3~5/5 毛勝山)のことを思い出す。
テン場で合流してから、雪渓のあるところまでは見ておこうと偵察へ。高巻きの夏道をしばらく進み、雪渓への下り口がよくわからないまま、2100m地点くらいで引き返した。小さな沢沿いのトラバースなど細かいルートミスもあり、偵察しておいて良かった。

■8/3(土)
雪渓に下りた。月が綺麗
2時に起床、3時半に出発。大学山岳部で八ツ峰を目指す学生さんたちが元気よく抜かしていく。彼らに合わせて雪渓に下りたら、ちょうどそこは昨日引き返したところのすぐ先だった(ラッキー)。軽アイゼンを装着(テン場まで12本爪も持ってきたが、スプーンカットで歩けるということで自分は4本爪、他2人は6本爪にした)。
取付き
取付き。さぁ、登るぞ!
大岩
最初の大岩。お助けスリングで突破。
木登り
楽しいジャングルゾーン。一箇所、木の根で両足を滑らせて、ズドンと落ちて脛を強打した(汗)。両手で木にぶら下がったから落ちなくて済んだけれど、打ちどころ悪ければ危なかった。
剱沢雪渓
剱沢を見下ろす。拡大すると左側に夏道が見える。我々が下りたのは「く」の字に影になっている沢筋のあたりかな。
この後、事前にマークしていた大岩は一応ロープを出して登った。中央左手のハーケンにスリングをかけ、A0もしくはアブミのようにすることで突破できた。(写真無し)
スラブ登り
樹林帯を抜け、写真でもよく見たスラブの登り。左上のカンテに向かって僅か15mくらいだと思うが、右側斜面に遮るものがないので、念のためにロープを出した。
I峰からの下り
I峰からの下り。向かいのⅡ峰が巨大に見える!
II峰の登り
噂通り、Ⅱ峰の登りはそれほど難しくない。ハイマツと岩場の境目をとにかく直上。掴みどころがたくさんあり、他に比べて岩は安定していた。
熊の岩と八ツ峰
熊の岩と八ツ峰。剣稜会ルートを登るクライマー(朝の学生さんたち)や、長次郎谷を詰め上がるパーティーもよく見えた。
II峰懸垂下降の準備
Ⅱ峰より懸垂下降のロープ準備。何パーティにも抜かされたので前後には誰もいなかった。昨年ごろ設置されたペツルボルトは、やはり既存のラッペルポイントよりも奥でセットしにくく、ロープが岩角に当たりそうなのでやめた。今年に入って設置されたらしい残置のロープスリングも鎖に絡まっていたので避けて、既存の大きな鎖にロープをかけた。
Ii峰の下降
トップの中村さんはバックアップ付。橋本さん、長い懸垂も全く恐れず常に笑顔!
無事に下降したあと、事件が起きる。ロープを引き抜く際に末端が落ちたあとの引きが甘く、中間が引っかかってしまったのだ。どう回しても外れない。結局、もう一方のロープを使い中村さんがリードで登り返すことに。気持ちばかりのビレイをする。二箇所のハーケンに中間支点をとり、岩の窪みに引っかかったロープを回収してくれた。腐った残置スリングを発見したとのことで、ロープを通してトラバースしながらクライムダウン気味に懸垂下降してもらった。スタンスが乏しく、勇敢な中村さんですら怖がるほど。危ない目にあわせてしまったが、回収できて何より。45分のロスとなった(下の写真は回収後)。各人が捨て縄をハーネスに携帯していると良かったし、懸垂後のロープの引抜きは最後まで勢い良く!というのが反省だ。
ロープ引抜きトラブル
最後の登りは道は広いけれどガレていて脆いので、一手、一歩を確実に。荷重をかける前にグラつきを確認し、真下にいる仲間に落石のないよう、少しでも登りやすいルートをとるよう、これまで以上に意識した。
雷鳥様!道案内
最後、少しガスってきたと思ったら、ハイマツよりひょっこり雷鳥さん。十数メートル、「こっちですよ」と言わんばかりに先導してくれて、感動。
チングルマ
辛い登り。チングルマのお花を見て癒される。
登頂
出発から約10時間、ついに・・・
剱登頂!
登頂!3人でやりきった! 「点の記」を読んだからには忘れられない、三角点タッチ。
振り返った源次郎尾根
山頂は岩が熱すぎて身体が休まらなかった。売店が閉まるかも、とビールを目指して急ぎ足で下山。途中、前剱のコルあたりで振り返った源次郎尾根。あんなところを来たんだなぁ、信じられないなぁと感慨深い。
クルマユリ
クルマユリ。山頂からは4時間弱で良いペースだ。剣山荘で大休止し、八ツ峰から下りてきたクライマーなどと交流した。待望のビールで乾杯。緊張を解き、今日のできごとをあれこれ振り返った。

■8/4(日)
5:30に起床、揃って室堂へと下山した。

<行程>
8/2 室堂10:30~雷鳥沢11:30~別山乗越14:20~劔沢キャンプ場15:00-15:30~偵察引返し点(2100m付近)16:30~劔沢キャンプ場17:30
8/3 劔沢キャンプ場3:30~源次郎尾根取付き4:30~I峰9:15~Ⅱ峰10:35~懸垂下降終了11:10~ロープ引抜きトラブル解決11:45~剱岳13:20-13:55~前剱15:55~一服剱17:05~剣山荘17:40-18:20~劔沢キャンプ場19:00
8/4 劔沢キャンプ場7:30~室堂11:50

<所感>
○中村
今回の源次郎尾根からの登頂が私にとって初剱岳。当初、厳しい山行になるのかなと思っておりましたが、皆さん頑張られ予定時間内(?)に戻ることができました。途中、早くビールが飲みたいとうるさかったかと思いますが、山行後のビールは最高に美味しく感じられました。
○橋本
山塾に入会して初めての夏合宿でした。
剱岳は昨年行きましたが生憎の曇りで山頂からの絶景を見ることが出来ませんでした。いつかリベンジを考えていた矢先の今回の企画。自分のクライミング技術の弱さが浮き彫りでした。自力で難しい岩場もリーダー秋永さん、中村さんから的確なアドバイスやロープを出して頂きました。今回は晴れ女、晴れ男揃い踏みで暑過ぎるくらいのお天気。山頂からの絶景は文句無し、大満足でした。絶景が見られたのもお二人のお陰です。ありがとうございました。
○秋永
登りでは先頭を歩かせてもらい、細やかなルートファインディングとロープ要否の判断についてかなりの経験を積むことができた。中村さんが下から丁寧にサポートしてくれてロープ不要だったところもあるし、時間はかかるが出して安心だったところもある。加えて全体的に岩が脆い。総じて、沢での経験が大いに活きると思った。今回見た八ツ峰にも、いずれ挑戦したい。

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