伊藤新道から高天原・雲ノ平

  • 期間 2024-09-05~2024-09-09
  • メンバー L田中(35期)、小林英(25期)
  • 記録 田中

2023年に復活した伊藤新道と神々しい高天原温泉がテーマの旅。どちらも最高のシチュエーションであり、大満足の縦走でした。

■9/5(木)
新宿発8:00のあずさ5号で信濃大町11:16到着。ちょうどお昼時だったので駅舎内の立食い蕎麦屋を利用した。券売機の操作がわかりずらく、後ろに人を待たせていることも重なり焦ってしまう。
駅前に営業所のあるアルプス第一交通でタクシーを予約してあり、事務所で案内を乞う。現在の高瀬ダムアクセスは、途中の林道に落石のあるため以下の通り(実際のタクシー料金はもう少し掛かった)。
 ・信濃大町から七倉山荘まで8,000円
 ・七倉山荘から落石のための歩行区間手前まで1,000円
 ・500mくらい歩いて再び同じタクシーに乗車し、高瀬ダムまで800円
 ・2024年10月中には落石した法面を補修工事する予定
落石箇所
高瀬ダムから林道を使い、湯俣山荘(2023年復旧)まで2時間強。翌日の伊藤新道入渓の届をした。ここと三俣山荘とで伊藤新道を管理している。
今日のテント場である晴嵐荘に行くには湯俣川を左岸に渡渉しなければならない。昔は浅瀬を見つけて渡渉していたのだが現在はジップラインで渡ることができる。晴嵐荘のテント料金は1張1000円+1名あたり1000円(つまり今回は1500円/人)で、ビールはサントリー500ml缶が1000円だった。砂地の寝やすいテント場である。
晴嵐荘テント

■9/6(金)
5時に出発。薄闇の中、結構高度があるジップラインで川の上を渡るのが怖い。
夜明けのジップライン
水俣川に架かる吊橋を渡り、天然記念物「噴湯丘」をのんびり見学していたら、後続パーティ(ご婦人5名)が見えた。このパーティには沢パートの最後まで追いかけられ、おしりを押されることになった。
噴湯丘
伊藤新道は、三俣山荘オーナーであり『黒部の山賊』の著者でもある故・伊藤正一が1950年代に開いて登山者の人気を集め、山荘へのボッカにも使われた。しかしその後、鉄砲水や谷の岩盤の緩みにより吊橋が崩落、1980年代前半には通行困難に。それを長年にわたって整備し、再開通を果たした。昭文社山と高原地図によると、コースタイムは沢パート、山パート各5時間の計10時間、「登山の総合力が試されるバリエーションコース」である。
沢パートには吊橋が第一、第三、第五とあるが、今は第一吊橋しか利用できない。昨年はどの橋も使えたのだが、台風で第三と第五は利用不能になった。第三は床板がすべて外れていて無残なものだった。また、スラブをトラバースするようにアルミ板やステップを付けた桟道(30m)も落石のため利用不能となっている。つまり、現状の沢パートは、第一吊橋以外は渡渉、へつり、高巻きでこなすしかない。ただ、登攀要素はなく、桟道が使えない箇所も(増水していなければ)対岸を歩けるので、渡渉に自信があればロープ、ハーネスは不要であった。特に、ゴルジュのへつりは渡渉回数を減らせるので水量と先の地形を見定めた上で多用した。
高巻き/ガンダム岩

笹薮高巻き/ガンダム岩

桟道

利用不能の桟道

へつり/渡渉

渡渉したりへつったり

沢パート 空が開ける

ワリモ沢出合を過ぎ、空が開ける

4時間で沢パート終了地点の第五吊橋に到着し、沢靴から山靴に履き替えた。ちなみに小林は沢靴代わりにラバーソールのマリンシューズ(アマゾンで2360円)を使用したところ、軽量で乾き易い点は良いが、底が薄いため次第に足裏が痛くなり、河原の大岩を越えるのに滑る場面もあった。

山パート入口

山パートへ

山パートは、地形図2116m地点までの高度差450m程はうんざりするほどの急登の連続。途中、赤沢に下って渡渉するが、三俣山荘で会話した山岳ガイド(仕事の合間でソロテントを張っていた)の話では、第五吊橋から赤沢渡渉箇所まで沢沿いに遡行できるとのこと。一山分登りを省略でき、ロープも必要なく、さらに途中で美しい淵も見られるそうだ。
山パートでの救いは所々で見られる槍ヶ岳である。ハシゴやロープ、木の根登りの末に穂先が覗き始め、やがて「展望台」(2140m付近)で硫黄尾根の向こうに北鎌尾根を従えてそそり立つ。「第一庭園」(2340m付近)を過ぎると鷲羽岳南のトラバース道になり、槍ヶ岳も少しずつ角度を変えてなごみを与えてくれた。
山パートの癒し
鷲羽岳の縦走路に合流して伊藤新道を完遂、三俣山荘へ。

三俣山荘のテント場(三俣蓮華岳キャンプ場)は2000円/人。テントを張った後、小屋2Fの食堂で正面に槍ヶ岳を見ながら缶ビール(キリン一番搾り、サッポロ黒ラベル、サントリーあり、500ml缶1000円)を飲む。トイレは小屋にしかなく、テント場から離れている点は少し困る。

■9/7(土)
5時に出発。山頂がガスに隠れている鷲羽岳を、もくもくと登る。鷲羽岳からの稜線歩行が楽しい。水晶小屋手前ではハイマツの間にライチョウの親子が姿を見せてくれた。
ライチョウ
水晶小屋ではユーチューバーのアリョーナさん(⇒ YouTube/安涼奈の山登り)が動画撮影中だった。小屋の裏から稜線を辿り、水晶岳に登頂。温泉沢ノ頭から高天原温泉へと800m下降する。樹林帯に入るまではガレあるいはザレの急降下だがペンキマークが豊富で迷うことはない。
温泉沢ノ頭
樹林帯から最後にロープを伝って温泉沢に下りる。あとは沢沿いの下りで、山と高原地図に「数回」とあるよりも渡渉回数は多かった印象だが、ペンキマークを拾って行けば靴を脱ぐ必要はなかった(増水すると一部に厳しい箇所はある)。
高天原温泉は、戦前に高天原(当時は岩苔平と呼ばれた)一帯で行われていたモリブデン採掘の中で発見され、現在は野湯(男女共用)と囲い付きの露天が二つ(男性専用、女性専用)、都合三つの湯舟がある。山荘に宿泊する人は無料、立寄りは300円。誰もいない(と思った)のを幸い、野湯に浸かった。昔は鉱夫が重労働明けに浸かっていたのかな。
高天原温泉の野湯
小林は湯に入る前に夢ノ平を往復。竜晶池ではトンボが産卵していた。

高天原山荘にテン場はなく、1泊2食で13000円/人。ビールはサントリー500ml缶1000円。我々の割り当てられた2Fは古いタイプの雑魚寝スタイルだが、グループごとに一人(布団1枚)分のスペースを空けてあったようだ。

■9/8(日)
小屋の朝食は5時からで、夕食に比べて人数は半減した。早立ちして長く歩く人が多いのだろう。
5:40に出発。高天原峠から雲ノ平へ。木道が整備されており、快適に歩ける。巨岩帯を抜けて雲ノ平の台地へ立つ。曇っていたので雲ノ平小屋にも寄らず、たんたんと太郎平に向かう。途中、アルプス庭園の祖母岳(ばあだけ)には寄った。
雲ノ平
木道が尽きて薬師沢出合へと下る道は、山と高原地図に「急坂、ハシゴあり 滑りやすい」とある通り。特に小林は底が硬目の靴なので、湿った黒っぽい岩に足を下すたびに滑らないかと気を遣って疲れた。
薬師沢小屋で休憩。河原からハシゴを登って吊橋を渡るというロケーションで、黒部川・上ノ廊下~奥ノ廊下を遡行するとここに辿り着くことになる。田中はうどん(1000円)を食べた。
薬師沢小屋
小屋からひと登りして、また木道を歩く。雲ノ平から太郎平小屋までの道中が最も整備されていて、6月から7月の花のシーズンに歩きたい。
木道
太郎平小屋で確認すると、テント受付はキャンプ場でとのこと。小屋で缶ビール500ml(サントリー、1000円)を買い、20分離れた薬師峠の太郎平キャンプ場へ。テント料金は1500円/人、ビール350ml缶は800円(こちらにはロング缶は無い)。

■9/9(月)
5時に出発。周りにつられて予定よりも早く出てしまった。折立へは気持ちの良い木道とがっかりなゴーロ道で3時間弱で下山。
朝の水晶岳~黒部五郎岳

朝の水晶岳~黒部五郎岳

折立への道

折立への道

予約していたタクシーで有峰口駅へ(10410円+有峰林道通行料2000円)。富山電鉄を富山駅手前の稲荷町で降り、まさに「地元の銭湯」という感じのいなり鉱泉(入浴470円、シャンプー、石鹸別)に浸かって、5日分の垢を流した。

<行程>
9/5 高瀬ダム12:50~晴嵐荘(テント)15:20
9/6 晴嵐荘5:00~噴湯丘5:30~第五吊橋9:00~赤沢渡渉9:45~第一庭園12:30~三俣山荘13:45~三俣蓮華岳キャンプ場14:10
9/7 三俣蓮華岳キャンプ場5:30~鷲羽岳7:00~水晶小屋8:30~水晶岳9:20~温泉沢ノ頭10:20~高天原温泉/夢ノ平12:30-13:40~高天原山荘14:00
9/8 高天原山荘5:40~高天原峠6:30~雲ノ平8:20~祖母岳ピストン8:30-8:55~薬師沢小屋10:50-11:20~太郎平小屋13:30~太郎平キャンプ場14:00
9/9 太郎平キャンプ場5:00~折立7:50

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